20年後ダウンタウンはどうなっているのか? 芸人はどう引退すべきなのか

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 6月12日NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『昭和芸人 七人の最期』(文藝春秋)の著者・笹山敬輔さんが出演した。同書は昭和の喜劇人たちについての深い考察が30代半ばの筆者によって的確に著されていると、お笑いファンの間では話題の一冊。笹山さんの芸人への思いがたっぷりと語られた放送となった。

■芸人の最期はどうなるのか?

『昭和芸人 七人の最期』は昭和の時代を笑いで彩ったコメディアンたちの晩年に焦点を当てた評伝集。笹山さんは1979年生まれの大衆演劇研究者で文学博士。なぜ芸人の最期に着目したのかと番組聞き手の高市佳明アナウンサー(44)に問われた笹山さんは、今後20年の間に現在活躍している大物お笑い芸人の最期をファンは見ることになる、と論を展開した。笹山さん自身はダウンタウンから大きな影響を受けたという。自分が人生に大きな影響を受けた芸人が今後どうなっていくのか、まさに自分のこととして心配になると心情を吐露。では過去はどうだったのだろうと歴史に学べば、その心構えができると思い本書を書いた、と執筆の動機を語った。

■同情で笑いが起きなくなったエノケン

 番組では同書で取り上げられている7人の芸人たちについて笹山さんが解説した。まずは「昭和の喜劇王」榎本健一について。エノケンは飛び跳ねるなどの動きを武器に笑いをとってきた。しかし晩年は病気により右足切断の憂き目に遭っていた。動きを封じられたエノケンは口癖のように、同情されたらおしまいだと口にし、気丈に振る舞ってはいたものの、ファンはエノケンの境遇に同情してしまっていた。エノケンが笑わせよう笑わせようとするほどファンの同情を引いてしまい笑いからは遠ざかっていった。それがエノケンの晩年の苦しみに繋がっていると笹山さんは解説した。

■タモリがシンパシーを抱いたロッパ

 エノケンと並び喜劇王と称された古川ロッパ。晩年は救いのない日記も出版された。それを読んだタモリ(70)が自分と似ていると語ったという。ロッパもタモリも30歳近くの遅いデビュー。ロッパの芸能界に馴染めないという思いにもタモリは共感を抱いたという。最近のタモリに関する評論『タモリ論』樋口毅宏[著](新潮社)などでタモリは絶望しながら芸能の世界にいると語られているが、ロッパも同様にある種の絶望を抱えて生きていたという。晩年人気が無くなっていくのも冷静に俯瞰できてしまう。それが偽りの希望を持つことを自ら許さなくなり、自分を追い込んでいったと笹山さんは分析した。

■伊東四朗の矜持

 続けて笹山さんは、柳家金語楼やトニー谷についても語り、話は同書の最後に収められている伊東四朗さん(79)のインタビューにも及んだ。現役のコメディアンに「芸人の最期」について聞くというのは緊張したと笹山さんは語るも、伊東さんは自らの最期について率直に淡々と心境を明かしてくれたという。伊東さんは多くの喜劇人の最期を見ており、皆が引きぎわに悩んでいることを実感しており、自身の引退はフェイドアウトがいいと語っていたという。「喜劇は動かなくなったらどうにもならないんだ」とも話し「うじうじやっているのはかっこ悪いんだ」との言葉に江戸っ子の矜持を感じたと笹山さんは印象を述べた。

 NHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」は毎週日曜6時40分ごろに放送。コーナーはNHKのウェブサイト(http://www4.nhk.or.jp/r-asa/340/)でも聞くことができる。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年6月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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