オードリー若林「自分のことを善だと思っている勢いが怖い」多面性を認めない社会に苦言

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 お笑いコンビオードリーの若林正恭さん(37)が司会を務めるBSジャパンの番組「ご本、出しときますね?」に6月17日、どちらも直木賞を受賞している作家の角田光代さん(49)と西加奈子さん(39)が出演した。大御所作家の意外な一面や、最近の不寛容な社会についても語られた。

■“ドン御所”角田光代が全身タイツ?

 2人はプライベートでも仲が良いという。西さんは「角田さんの仕事場でご飯を作ってもらい、高いワインをぼんぼんあけてくれる」と嬉しそうに話し、最初は大先輩なので遠慮してたものの今では「角田さんおかわり!」と言いだすほどだという。しかし西さんは角田さんのことを「こんな方にお会いしたことがない」と尊敬をあらわす。角田さんは「大御所より“ドン御所”やん」と西さんならではの表現。とったことのない賞がないほどの“ドン御所”なのに「自分を良く見せなさ過ぎて」角田さんがやるような仕事でないものでも全部引き受けてしまうのが弊害だと西さんは語る。西さんに来る仕事の依頼で、この条件では難しいというものでも、角田さんは引き受けてしまう。ダイエット企画で全身タイツを着せられ、脂肪のラインまで書かれていた角田さんを見たときは「なにやってんねん! 角田光代やで!」とわなわなとふるえ、怒り気味で「なんであんな仕事うけたんですか」と聞くと「痩せたかったから」と言われたと明かし3人は大爆笑していた。

 角田さんは以前は仕事を「やりたいかやりたくないか」で選べることがわからず、何でも受けてしまっていたという。「やりたくない」と考えていいんだ、とわかるまでは、スケジュールさえ空いていれば何でも受けてしまっていたそうだ。西さんは角田さんの仕事場で「小説以外の仕事は断る」と書いてあるのを発見し、涙が出たと笑い「誰も角田さんに仕事を頼むな!」と叫んでいた。

■ボクシング歴16年

 角田さんの2012年の長編小説『空の拳』(日本経済新聞出版社)は、ボクシングを題材にしている。角田さん自身はスポーツは「大っきらい」というものの、ジムに通い16年間もボクシングを続けているという。そしてジムに通い出したきっかけは、33歳で訪れた失恋だったと告白した。今後も来る失恋に備え「心を強くしておかないと耐えられない。強い心は強い肉体に宿る」と思いジムに通い出したという。若林さんに身体を動かすことは本を書くことに良い影響はあるのか、と問われると「誰よりも強くなれないと知って、仕事を人と比べなくなり、気持ちが楽になった」とその効用を静かに語っていた。

■正義って優しくない

 作家と若林さんが自分に課しているルールを語るコーナーで西さんは「『根はいい子制度』は絶対ではない」と持論を述べた。少女マンガなどでよくある、普段は印象の悪い不良の優しい一面をみたときに「本当はいい奴だったんだ」と一気に針が逆方向に振れる。「それは素敵な制度だと思う」と西さんは言う。しかしいつも優しいおじいさんの嫌な面を見た時に「本当は嫌な人だったんだ」と思うのは無しにしようと述べ、前者と後者をイコールにしないと論を展開した。最近の例としてタレントのベッキーさん(32)をあげ、「1回の失敗でその人の努力全部無しにすんなよ」と語り、「もし悪人がいい人ぶっていたとしても、それはめっちゃ努力してやってること。一旦その努力を認めようよ」と寛容さが大事だと主張した。

 若林さんも「多面体を認めないというか、『本当はどういう人なの?』という言い方をする」と最近の風潮をチクリ。「根がいい子が悪いことをして、本当は悪い人だと糾弾をする人は自分のことをめちゃくちゃ正義だと思ってる。自分にそういう部分がないと思ってる」と語ると、西さんも「正義って優しくないもんね」と同意をあらわした。また若林さんは「自分のことを善だと思っている勢いが怖い。そういうニュースで悪いこと(?)をした人を糾弾しているときのスタジオの空気は全体主義っぽくて怖い」と不寛容な社会に対し恐怖をあらわした。

「ご本、出しときますね?」は来週6月24日の放送で第1シーズンが終了の予定。来週もゲストは角田さんと西さん。同番組の最新の放送回はBSジャパンのウェブサイト(http://www.bs-j.co.jp/gohon/index.html)でも無料配信されている。

 文筆系トークバラエティ「ご本、出しときますね?」はBSジャパンにて毎週金曜よる11時30分から放送中。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年6月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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