稲垣吾郎も苦笑 「返品の嵐」となったブックデザイナー祖父江慎の伝説的な「ミスだらけの本」

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 SMAPの稲垣吾郎さん(42)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」に7月8日、ブックデザイナーの祖父江慎さん(57)が出演した。祖父江さんのデザインした特殊な装丁の本が続々と紹介され、稲垣さんもそのこだわりとアイデアに感心していた。

■ブックデザイン界の巨匠

 祖父江さんはおよそ30年にわたり2000冊以上の本を手がけてきたブックデザイン界の巨匠。この日の番組は祖父江さんの事務所に稲垣さんが訪れて収録された。巨大な書棚に囲まれた作業場には祖父江さんデザインの本が並ぶ一角もあり、そこには番組にも登場した著名人の本がずらりと並ぶ。楳図かずお、しりあがり寿、本谷有希子、瀬戸内寂聴、荒木経惟、などなど。祖父江さんのデザインは奇抜な装丁で話題となる事が多いが、文字や書体など文字組へのこだわりも相当なもので、編集者からの信頼も厚いという。この日の課題図書『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイインターナショナル)は祖父江さんのこれまでの仕事を解説付きで紹介した一冊だ。

■作風がない!

 稲垣さんは祖父江さんの手がけた本を「読んだことがあるものがいっぱい」と祖父江さんのデザインとは知らないで手に取っていたという。しかし「どれも被るものがない。これが祖父江さんっぽいっていう、画家で言うところの画風がない」と祖父江デザインの多様さを評した。祖父江さんは「それそれ!作風が苦手なんです」と稲垣さんの核心をつく評にうなずき、同じデザインにならないように、ノウハウや癖にならないように注意をして作っている、とデザインに対する考え方を明かした。

■作品の邪魔をしないように

 番組では祖父江さんがこれまで手掛けた本が紹介され、その特殊なデザインを祖父江さん自身が解説していた。さくらももこのエッセイ『あのころ』(集英社)で卵の殻を使った手法や、楳図かずおの『恐怖』(小学館)で取り入れた読者を怖がらせる手法を解説。ただし祖父江さんは「作品の邪魔をしないように、読んでもらっているときに気づかれないようにしている」とも語る。2度3度読む人が、最初気づかなかったけれども、と気づく程度に抑えているとデザインポリシーを語った。

1『あのころ』、『銀の言いまつがい』

■乱丁・落丁を装った結果……

 また『言いまつがい』糸井重里[著](東京糸井重里事務所、新潮社)や『伝染(うつ)るんです。』吉田戦車[著](小学館)などの祖父江さんの伝説的な装丁もとりあげられた。『言いまつがい』では斜めに裁断されていたり穴があいていたり、造本用のテープが表紙に貼られていたり……。『伝染(うつ)るんです。』にいたっては同じ内容のページがあったり、白紙のページがあったりと、「素人がてがけたミスだらけ本」を目指したという。その結果読者に乱丁・落丁だと勘違いさせてしまい「返品の嵐だった」と祖父江さんは反省の言葉を口にし、稲垣さんも苦笑していた。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。来週のゲストも引き続き祖父江慎さん。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年7月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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