「アウンサンスーチー」さんは、どこが「姓」でどこが「名」なのか?

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 作家の高橋源一郎(65)さんが、司会を務めるNHKラジオ第1の「すっぴん!」(7月8日放送回)のコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」で『世界の名前』岩波書店辞典編集部[編集](岩波書店)が取り上げられた。

■世界中で全く違う「名前」

『世界の名前』は世界各地の名前の仕組みや意味・由来を紹介した一冊。日本では「名前=姓+名」だが世界にはまったく違うルールの名前が存在する。番組では同書からいくつかの名前に関するエピソードが紹介された。

 高橋さんは「ミャンマーの民主化運動家アウンサンスーチーさんはどこが『名』なのだろう?」と問いかけた。よく日本では「スーチーさん」と呼ばれることがあるが、それは正しくない。伝統的にミャンマーに「姓」はなく、このひとつながりで「名」なのだ。しかし近年「姓」に当たるものを求める気風があり、家族の名前を受け継ぐことがあるという。彼女の場合「アウンサン」は父親の名前。「スー」は祖母、「チー」は母親の名前である。このままでは落語の「寿限無」のような名前になってしまうため、4つ以上組み合わさってくると、いずれかの名前が外されてゆく。そのため結局「姓」の役割にはならないと解説された。その後も高橋さんはアフリカやオランダなどの独特な名前の付け方を紹介し、名前は社会のありかたが反映されている、とまとめた。

■子供たちが「くに」を作る

 この日高橋さんは文芸誌「すばる 8月号」(集英社)で始まった新連載小説「ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた」についても語った。今作は高橋さんにとって久しぶりの小説。高橋さんは原稿を活字で見ると「5割アップくらい、いい感じになる」と語りながら、自作を「グッジョブ!」と評価し、新作の面白さに自信をあらわした。

 同作は数人の少年たちが主人公。彼らは夏休みのホームワークで本物の「くに」を作ろうと計画をたてる。小中学生に人気のゲーム「マインクラフト」や人気ユーチューバーを思わせるあだ名のキャラクターも登場し、現代的な子供たちのやりとりが描かれる。国家観が揺らぐような意欲的な思考実験となるのか、はたまた少年たちの成長譚となるのか。続きが待ち遠しい一作だ。

 高橋さんは今後の展開についても少しだけ種明かしをした。子供たちの「くに」は独立国となり「外交関係を樹立しようと、世界中の国に連絡する。子供の国だから、と無視されるのだけれど、1国だけ国交を樹立しても良いと返事が来るんです」とこの先の構想を明かした。

すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。「源ちゃんのゲンダイ国語」のコーナーはNHKラジオ第1のウェブサイトのポッドキャストのページ(http://www.nhk.or.jp/suppin/podcast.html)で聞くこともできる。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年7月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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