ブックデザイナーの祖父江慎「デザイナーは本の助産師的な立場」ゴロウ・デラックスで語る

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 SMAPの稲垣吾郎さん(42)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」に7月15日、ブックデザイナーの祖父江慎さん(57)が出演した。祖父江さんがデザインをはじめたルーツやデザインに対する考え方が明かされた。

■はじめて手がけた本

 祖父江さんはおよそ30年にわたり2000冊以上の本を手がけてきたブックデザイン界の巨匠。今週の放送分も先週に引き続き祖父江さんの事務所に稲垣さんが訪れて収録された。この日は祖父江さんのデザインのルーツから番組はスタートした。

 1985年、祖父江さんが25歳の頃多摩美術大学の先輩にあたる漫画家のしりあがり寿さん(58)に誘われブックデザイナーの道に足を踏み入れた。しりあがりさんのデビュー作『エレキな春』(白泉社)がはじめて手掛けた本となった。

 大学時代しりあがりさんは漫画研究会の部長で、部員増のために「入れさせられた」のが祖父江さんだった。『エレキな春』は新人漫画としては異例のヒット。祖父江さんにもブックデザインの依頼が多数来るようになった。

■めまいのするデザイン

 2005年に祖父江さんが手がけた恩田陸さんのミステリー小説『ユージニア』(角川書店)は、恩田さんからの注文を受けて特殊な作りになっているという。ミステリーといえば謎が解けてスカっとするのが常道だが、恩田さんからのリクエストは読めば読むほど具合が悪くなり、めまいがしてすっきりしないような感じにできないかというもの。

 そこで祖父江さんは違和感を与えるため、句読点を古い書体にしたり、拗促音(ゃ、ゅ、ょ、っ等)の位置を右上寄りに印刷。さらには漢字とひらがな、カタカナをそれぞれ別の書体にするなど「小説に合わせてカフェのようにブレンドした」と驚異のこだわりを解説した。

 稲垣さんは「こんなこと知らないよ見てる人。本好きな人でも」と驚くも、祖父江さんは「知られないようにしたいという気持ちもある。なんか普段と違うという、そよ風くらいでいいんです」と先週も語られた「作品の邪魔をしないように」というデザインポリシーが根底にはあるようだった。

3はじめて手掛けた本『エレキな春』、めまいがしてすっきりしない?装丁『ユージニア』

■『坊っちゃん』コレクション

 また祖父江さんの仰天のコレクションも紹介された。書庫の一角に並んでいたのは、数百冊の『坊っちゃん』夏目漱石[著](新潮社)。それもハードカバーや箱入り、文庫に児童書タイプ、さらにはお風呂用や豆本サイズなど、これまでに出版された様々な形の『坊っちゃん』だった。

 祖父江さんは日本の文字組を研究しようと考え、出版されてから100年が経ち、どの古本屋でも安く出ている本という理由で『坊っちゃん』を選択。同じ本でも版を重ねるごとに細かに書体や行間が変わっており、それを間違い探しのようにみつけるのだという。


 そしていつか夏目漱石の本を手掛けたいと考えていた祖父江さんに2014年岩波書店から『こころ』のデザインが舞い込んだ。『漱石 心 (祖父江慎ブックデザイン) 』(岩波書店)は満員電車でも片手で読めるように、ページがめくりやすくなっているという。さらにノド(見開きにしたときの綴じ部)の余白を大きくとってあり、本を大きく開かなくても読めるのだ。祖父江さんは「片手設計を極めた」デザインだと解説した。

■本の助産師

『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイインターナショナル)は祖父江さんのこれまでの仕事を解説付きで紹介した一冊。番組ではこの後も仰天のアイデアが次々と紹介され、稲垣さんは「本の番組やってるのに知らないことばっかりだったね」と感心していた。

 しかし祖父江さん自身は「デザイナーが『こうだ!』と無理をしてやらないように。程良い形で、テキストが形になることをお手伝いする助産師的な立場」とデザインに対する考え方を述べながら、「本は著者のもの、デザイナーのものではない」と強調していた。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。来週のゲストは漫画家のさいとう・たかをさん。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年7月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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