作家・高橋源一郎 夏の推薦図書3冊を紹介 「読書」と「夏休み」に共通する「束の間の幸せ」
テレビ・ラジオで取り上げられた本
作家の高橋源一郎(65)さんが、司会を務めるNHKラジオ第1の「すっぴん!」(7月15日放送回)のコーナー「源ちゃんのゲンダイ国語」では夏休みに合わせ、高橋さんの夏の推薦図書が3冊紹介された。
今回高橋さんが選んだのは、自身も何回も繰り返し読み、また読み返したいという以下の3冊。
『夏への扉』ロバート・A・ハインライン[著](早川書房)
『たんぽぽのお酒』レイ・ブラッドベリ[著](晶文社)
『ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉』C・S・ルイス[著](岩波書店)
■タイムトラベル小説の代表作
『夏への扉』はタイムトラベルを題材にしたSF小説。恋人に裏切られ冬のように凍てついた主人公は「夏への扉」を探していた。失意の中30年間の冷凍睡眠にはいった主人公が目覚めたとき、未来は望むような未来ではなかった。タイムマシンが登場し、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のモチーフになったとも言われている。高橋さんは青春小説でもありファンタジーでもあると解説。自身も中学生のころに読んだと話し、長編に没頭できる夏休みにちょうどいい一冊だと薦めた。
■輝かしい夏に経験する悲しみ
『たんぽぽのお酒』はひと夏で少年が成長してゆく物語。生命に溢れた輝かしい夏の陽ざしのなか、少年は身近な老人の死や不思議な事件を経験する。生命の瞬きがあるからこそ夏は一層光り輝く。高橋さんも中学生の頃に読み、その後ブラッドベリの作品を全て読んでしまったというほど影響を受けたと語る。そして夏休みに読むとまさに少年と同じ時間を過ごせると薦めた。
■夏休みに探検に出かけるようなファンタジー
『ライオンと魔女』は映画にもなったファンタジー小説。戦火を逃れ疎開した4人のきょうだい。疎開先の広いお屋敷の衣装だんすは偉大なるライオンの王アスランがつくったナルニア国へと続いていた。高橋さんは日本でいうならば、「夏休みに田舎に帰省すると、開かずの部屋や蔵があるでしょ」と想像を広げる。ナルニア国は冬だけど、これは夏休みの感覚なんだよね、と高橋さんはいう。夏には普段行かない、林間学校やおじいちゃんおばあちゃんのいる田舎に出かけ、そこで探検をする。そのような感覚を得られる一冊だと紹介した。
■悲しみを知る前の幸せな時間
高橋さんは子ども時代を、悲しみを知る前の束の間の幸せな時間だと説く。大人になれば身近な祖母や祖父は亡くなってしまう。その手前の喜びしか知らない時代が子どものころだと解説した。
そして読書では「悲しみ」がもうすぐやって来る、その手前に「喜び」があるということを知ることができると語る。読書行為自体を夏休みに喩え「本の中(夏休み)には楽しい夢のような世界が広がっている。しかし夏休み(読書)が終わると厳しい現実が待っている。読書は束の間の幸せだ」と3冊に共通する構造を説き明かし、夏休みに読書をすることを薦めた。
またこの日は本のオビ研究会主宰の竹内勝巳さんが出演。『オビから読むブックガイド』(勉誠出版)を上梓した竹内さんが「オビ」の魅力を解説した。
「すっぴん!」はNHKラジオ第1放送にて月曜から金曜8:05から日替わりのパーソナリティーで放送中(夏休み期間中はお休み。放送再開は8月29日)。高橋源一郎さんは金曜日を担当している。「源ちゃんのゲンダイ国語」のコーナーはNHKラジオ第1のウェブサイトのポッドキャストのページ(http://www.nhk.or.jp/suppin/podcast.html)で聞くこともできる。
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