客観性の病とは、自分ではなく、外部に評価の根拠を求めすぎてしまうこと。その症状は、TOEICのスコアのような、数値化された評価を過大に信奉してしまうことに典型的にあらわれます。点数だけでなく、たとえば「この英語の発音が正しい」というような、一般的に信じられている(と思われる)評価基準を重視しすぎる傾向も含まれます。
たとえば、「TOEICのスコアが満足いくものではないから希望する転職をあきらめた」とか、「正しい発音を身につけていないことを引け目に感じ、英語でプレゼンテーションする機会を辞退してしまった」というような経験がある人は、この病に冒されているのかもしれません。英語ネイティブのように発音できなくても、世界的に大活躍する非英語圏の人は大勢いるのですから。
また、この客観性の病は、人の主観を鈍らせ、自分で判断する能力を失わせる危険性を持っています。茂木氏は、脳科学者らしく次のように表現しています。
この客観性の病に侵されてしまうと、脳にも悪影響を及ぼす危険があるので注意が必要です。自分の主観が鈍っていくということは、前頭葉の判断する能力が衰えていってしまうことです。つまり、客観性に頼ろうとすればするほど、その人の前頭葉は働かなくなってしまうということです。(17ページ)
自分のパフォーマンスを「メタ認知」で点検する
外部の(一見)客観的な評価基準に頼りすぎると、自分で判断する能力が失われ、結果的にパフォーマンスが下がってしまう。このような状態に陥らないために、茂木氏は「自分で自分を評価しよう」と言っています。しかし、自己を正しく評価するのは難しいように思えます。どのように自己評価すればいいのでしょうか。
茂木氏は、「メタ認知」によって自分のパフォーマンスの度合いを点検することをすすめています。メタ認知とは、自分自身の思考や行動そのものを対象として、客観的に把握し認識することです。茂木氏は自分の仕事を例にとり、次のように説明しています。
私の場合でいえば、原稿の執筆が、まさにこの方法にあてはまります。(中略)書き終わった後で、必ず原稿を読み直すのですが、この推敲の作業がメタ認知だといえます。そこでもっと客観的な視点で自分の文章をチェックして、「この表現はこうしたほうがいいかもしれないな」などといった修正をほどこして原稿を仕上げています。(30ページ)
ただし、メタ認知を利用するときには忘れてはならないポイントがあります。それは、メタ認知のオンとオフを適切に使い分けることです。
つまり、仕事や勉強などに取り組んでいる最中は、パフォーマンスの質などを気にせずに、集中して全力で取り組んで、メタ認知を「オフ」にしておくのです。茂木氏が原稿を書いているときはまさにそういう状態です。そして、作業が終わった後にメタ認知を「オン」にして、自分のパフォーマンスを客観的に点検します。
このオンとオフを正しく切り替えないとパフォーマンスにいい影響を与えることはできません。目の前のことに取り組んでいる最中にもかかわらず、途中の経過を気にしてしまったり、いちいち自分にダメ出ししている人は、高いパフォーマンスを発揮できないでしょう。
自分のなかの基準を磨き、貫こう
このようにして自分のパフォーマンスを評価するとき、自分に甘くなってしまっては、パフォーマンスを向上させることはできません。他人や客観的な評価に頼らずに自分自身で評価を下す場合、その正当性が重要なのは言うまでもありません。
自分のパフォーマンスを正当に評価できる基準を自身のなかにつくり、それを貫くことによってさらにパフォーマンスを上げていくにはどうすればいいのでしょうか。茂木氏は以下のようなヒントを提示しています。
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