パフォーマンスを上げるのに必要なのは「やる気」ではなく「◯気」だ――茂木健一郎流「自分基準」の磨きかた

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既存の通念や常識を疑ってみる

学生との交流も多い茂木氏は、東大生よりも、芸術大学や美大の学生に、「センスの良さ」や「自分基準の高さ」を感じることが多いそうです。なぜなら、芸術系に進んだほとんどの学生たちは、「アートでは食えないでしょ?」と周囲に反対されたにもかかわらず、自分を貫き通した強さを持っているから。彼らには、偏差値で人間の頭の良さがわかるというルール、既存の常識から離れ、自分だけの感性を磨きあげていく強い意志があるのです。だから自然と、自分の基準が鍛えられるわけです。

既存の概念や常識、凝り固まった固定概念はパフォーマンスを加速させるのには不要なものです。そうした衣を脱ぎ捨てて、思考を裸にしてみることが大事です。

他人がつくった価値観や基準を忖度しない

たとえばミシュランで星を獲得したレストランで食事をしたとき、自分ではそれほどの感銘を受けなかったとします。しかし、自分で感じたものよりミシュランの評価に重きを置き「さすが。ミシュランで星を獲っているだけあるな」と評する……。これでは、いつまでたっても自分の感覚を磨くことはできないでしょう。

茂木氏の大切な友人である白洲信哉氏(祖父は官僚、実業家として著名な白洲次郎氏)、「ミシュランなんて関係ないでしょ? 自分が『美味しい』と思える店に出会えたらそれでいい」と言ったそうです。確固とした自分の基準を持ち、ぶれることなく物事の価値を評価することができる。参考にしたいですね。

「狂気」がパフォーマンスを高める!

仕事に集中して没頭したり、何かを成し遂げようとしてハイテンションでいると「何をムキになって頑張っているんだ」「ちょっとあの人のテンション怖くない?」などという声が聞こえてきそうで、「あ、もっと冷静にならなきゃ……」と、つい自分にブレーキをかけてしまいませんか?

しかし、ここ一番というときには、「火事場の馬鹿力」のように、脳のリミッターを振り切った状態を意識的に作り出すことも必要です。茂木氏によれば、古代ギリシャでは、「何かに没頭してクリエイティブな才能を発揮する状態」を「狂気」と捉えていたそうです。また、現代でも、スティーブ・ジョブズのような傑出したクリエイターたちの狂気的な一面はよく伝えられるところです。

茂木氏からのメッセージでこの稿を締めくくりましょう。

どうやったら自分らしいキャリアを切り開くことができるのか、どこに自分に適した仕事、職場があるのだろうかといった悩みを抱えて日々仕事や勉強をしている人がいるとすれば、ここ一番というときに、いい意味での狂気的な自分をつくり出してみてはいかがでしょうか。
たとえ周囲から非難されようとも、スティーブ・ジョブズのようにわが道を貫く──この勇気や大胆さが、あなたのパフォーマンスを火事場の馬鹿力のように高めてくれるのです。(39ページ)

日本実業出版社
2016年9月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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