またマスクは、早くからコンピューターやプログラミングに興味を持ち、12歳のときにはゲームソフトをつくり報酬を得ている。そんな彼がインターネットの登場によって大きく心を動かされ、「インターネットの影響力は、人類が神経システムを手に入れたときと同じだ」と考えたことは必然だったろう。
マスクはスタンフォード大学の大学院に進学したが2日で退学した。それは、次のようなギャップに気がつき、そのギャップを埋めることに強い関心を持ったからだった。
ギャップ1.「インターネットの大きな可能性と実際の活用状況のギャップ」
このギャップの発見は、マスクが世界を変えるためのビジネスを始めるきっかけとなった。1995年、彼は弟のキンバルとZip2を設立し、他社に先駆けてメディアのコンテンツをオンライン化するサービスをスタートさせたのである。Zip2は4年後、3億ドルを上回る金額で買収されることになる。
マスクが次に注目したギャップは、インターネットが登場したにもかかわらず、まったく旧態依然のままだった決済の仕組みだった。
ギャップ2.「小切手を送付してから決済を完了するまでに数週間もかかる」
オンラインで決済できるサービスを提供するX.comは、このギャップを埋めるためにマスクが立ち上げた会社だ。X.comは合併によりPayPalとなり、その後eBayに15億ドルで買収され、マスクは大きな売却益を手に入れた。
起業家として成功したイーロン・マスクは、以前から抱いていた宇宙進出の夢を実現すべく動き始め、まずは、地球の植物を火星で育てる実験に出資を決めた。しかし、人類が火星へ移住する可能性を開くこの事業には、ある壁があった。ほとんどのコストは圧縮できるものの、打ち上げのためのロケットがあまりにも高価なのだ。アメリカ国内で6500万ドル。ロシアで中古のロケットを買おうとしても2000万ドルかかる。
ギャップ3.「既存のロケットが高価すぎる」
ロケットの価格に疑問を持ったマスクは解決方法を探し始めた。問題のひとつは、ほぼすべてのロケットが注文生産で再利用されず、使い捨て同然だったことだ。この前提を覆し、再利用できるロケットをつくることが解決の鍵だと考えた。
もうひとつの問題は、政府と大手航空宇宙企業にあった。リスクを避けたい政府とボーイングやロッキード・マーティンなどの大手企業は、製造原価に一定の利益を上乗せした価格で取引していた。その原価も、最大のパフォーマンスを追求するあまりコスト意識に欠けたものだったのだ。
自分たちで、既存のものより先進的で、劇的に安価なロケットをつくることができる。そう考えたマスクは、有能な航空宇宙エンジニア2人を見つけ出しチームを結成、2002年にSpaceXを創業した。SpaceXはその後、数々の困難に直面しながらもそれを乗り越え、2012年5月、民間初の宇宙船の設計、製造、打ち上げに成功。現在はNASAと16億ドル以上の契約を結び、次々に計画されている打ち上げに向けて、3000人のスタッフがロケットエンジンの設計、生産に励んでいる。
「誰もが目にしているものを見て、誰も考えなかったことを思いつく。それが発見というものである」(セント=ジェルジ・アルベルト[生理学者])。イーロン・マスクはこの言葉通りに、ギャップを発見してきたのだ。
(以上、第1章「ギャップを見つける」から)
失敗は楽しいものでも愉快なものでもない。だが必要である。
クリエイターには共通の経験がある。失敗だ。
「失敗をゼロにしようとしているなら、おそらく成功のチャンスもゼロになる」というのは、LinkedInの共同創業者リード・ホフマンの信条だ。彼は最初に起業したSocial Netでの失敗からあらゆることを学んだという。
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