「背中に長い髪の毛が一本はいっちゃったような……」女優の杏 岩井志麻子のホラー小説の怖さを語る

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 女優の杏さん(30)とナビゲーターの大倉眞一郎さんが毎週1冊ずつ本を持ちより紹介するJ-WAVEの番組「BOOK BAR」。10月23日の放送では「1ページ目から夢中にさせる本」として読み始めたらページをめくる手が止まらない本が紹介され、杏さんは日本ホラー小説大賞を受賞した一冊をとりあげた。

■岡山弁の一人語りが怖い!

 杏さんは「お化けも出てきません……ホラーです」と『ぼっけえ、きょうてえ』岩井志麻子[著](KADOKAWA)を紹介。タイトルの『ぼっけえ、きょうてえ』とは岡山弁で「とても(ぼっけえ)怖い(きょうてい)」という意味。終始岡山弁の女郎の一人語りで物語は進み、日陰で生きてきた遊女の恐ろしい半生が語られる。物語の冒頭、女郎は眠れないという客に話しだす。

「――きょうてえ夢を見る? ……夢ゆうて、何じゃったかのぅ。ああ、寝ようる時に見る、あれ。あれか。なんと旦那さん、子供みてえじゃな。いやいや、笑ぃやしません。夢いうもんは、きょうてえものと決まっとりましょう」

 杏さんはホラーが苦手だと話しながらも「語り口ならではの怖さとリアリティがありますよねえ」とこの冒頭の一文に魅了され「聞いちゃう。続き何?何?みたいに」と引きこまれたという。語られる遊女の半生は凄惨でまさに生き地獄。いわゆる「お化け」は出てこないが、もやもやとした気味の悪さが続き、杏さんは「背中に長い髪の毛が一本はいっちゃったような」とその怖さを喩えた。

■作家・伊集院静の自伝的大河小説

 大倉さんは「ああ、ここから大きな物語がはじまるんだ」と伊集院静さんの『海峡』3部作(『海峡[海峡 幼年篇]』『春雷[海峡 少年篇]』『岬へ[海峡 青春篇]』いずれも新潮社刊)を紹介した。『海峡』は伊集院さんの自伝的長編。瀬戸内海の小さな港町で過ごした幼年期から、故郷を離れ大学へ進学し社会に出る手前の青年期までを描いている。大倉さんが魅了されたというその冒頭の一文は、

「海流はそびえる大きな樹に似ている」

と大河小説のはじまりを予感させる。主人公は過酷な運命に巻き込まれ、嵐のような感情に揺さぶられる。そのなかで喜びを知り、別れや旅立ちを経験し、全編に亘り人の絆と生きる意味が問いかけられる。大倉さんは「これは物語じゃ書けないんじゃないか」と自身をしっかりと見る客観的な視点を絶賛しながら、「こういう人生は今の時代背景では過ごせないんじゃないか」と魅力的な人生に憧れをあらわした。

 3週連続ゲストで今週が初登場のアニメーション・プロデューサーの石井朋彦さんは自著『自分を捨てる仕事術』(WAVE出版)を紹介。また千駄木の往来堂書店店長・笈入建志さんが『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』海猫沢めろん[著](講談社)を紹介した。

 またこの日は杏さんのエッセイ集『杏の気分ほろほろ』(朝日新聞出版)が10月20日に出版されたとの報告もあった。

 「BOOK BAR」はJ-WAVEにて毎週日曜0時(土曜深夜)から放送中。

Book Bang編集部

Book Bang編集部
2016年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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