【聞きたい。】平松謙三さん 『世界を旅するネコ』

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『世界を旅するネコ』 クロネコノロの飛行機便、37カ国へ

[レビュアー] 産経新聞社

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平松謙三さん

 ■シリアでは強面の男性が…

 世界の街角や名所にたたずむ猫の写真。というだけなら珍しくはないが、すべて同じ1匹の猫となると、ちょっとよそではお目にかかれないだろう。平成14年から今年の6月まで愛猫と訪れた国は37カ国に及び、9カ月だったノロは15歳のおじいさんになった。

 「多分、世界で一番、旅をしている猫だと思いますよ」と語るが、きっかけは犬と一緒にヨーロッパに行った人の本を読んだことだった。飛行機内への持ち込み方法や検疫などについて徹底的に調べ上げ、プライベートのヨーロッパ旅行に連れていった。

 「最大の理由は置いてきた猫の心配をしないで済むこと。生後2~3カ月から車や新幹線に乗せても大丈夫だったので、自信はあった。ものすごく大変だとは考えていませんでした」

 だがこの本を読む限り、トイレを用意したり、役所を駆けずり回ったり、煩雑さは相当なものだ。「もともとチャレンジングなことが好きなので」と意に介さないが、その苦労を知ってか知らずか、本に収められているノロくんの表情は何とものんびりしている。

 「時差ボケもないんですよね。食の変化も楽しんでいるみたいで、旅先の方が食欲が増す。間違いなくストレスがたまっていない感じで、だから僕もあまりストレスにならないんです」

 37カ国はヨーロッパと中東が中心だが、車で回りやすく、ペットに対して寛容な風土があるという。まだ戦火に見舞われる前のシリアも訪れたが、ノロといると強面(こわもて)の男性がニコニコして声をかけてきた。

 「中東は猫好きのおっさんが多く、人間的魅力をすごく感じました。ノロはただの飼い猫だけど、一緒にいるのが普通の存在で、ノロのいない旅は考えられない。彼も一緒にいるのが当たり前だと思っていると思う。また行きたいという気持ちはありますが、もう高齢なので、こればかりは自分では決められないなと思っています」(宝島社・1300円+税)

産経新聞
2016年11月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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