【児童書】『これはすいへいせん』谷川俊太郎文、tupera tupera絵
[レビュアー] 産経新聞社
■最強の読み聞かせ絵本
最初の見開きページには《これは すいへいせん》の文字と水平線の絵。ページを繰ると、《これは すいへいせんの むこうから ながれてきた いえ》と言葉が積み上げられ、本を手に眠っているおじいさんがいる赤い屋根の家がドップラドップラと水平線から流れてくる絵が現れる。次のページでは《これは すいへいせんの むこうから ながれてきた いえで ひるねしていた おじいさんの ガブリエル》と、またもや言葉が積み上げられ、ガブリエルをクローズアップした絵が。
こんな調子で言葉はどんどん積み上げられ、絵はどんどんクローズアップされて物語は思わぬ方向に展開してゆく。9字だったテキストは最終的に266字にまで積み上げられ、ヤシの生えた島に建つ赤い屋根の家とガブリエル、その家を建てた大工のさんざえもんの絵で締めくくられる。
繰り返されながら積み上げられてゆくテキストと次々にクローズアップされる絵は、強い引力で子供を物語世界へ引き込んでしまうはずだ。傑作!(金の星社・1500円+税)(桑原聡)