「覚える」よりも「思い出す」を優先すべし! 司法試験一発合格の著者が教える暗記術とは

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「覚える」よりも「思い出す」を優先すべし! 司法試験一発合格の著者が教える暗記術とは

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

小学5年生まで九九もできず、高校時代の成績は不名誉にも偏差値30の学年ビリ。家は貧乏なヤンキー一家でしたし、スポーツも苦手で、女の子にもモテず、とにかくすべてにおいてダメダメな子どもだったのです。(「はじめに」より))

自身の過去をそう振り返るのは、『ずるい暗記術―――偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』(佐藤大和著、ダイヤモンド社)の著者。しかし現在は法律事務所を経営し、テレビなどのメディアに出演し、セミナーも開催しているのだそうです。なぜ、そこまで変われたのか? その理由については、「いままでやってきた勉強法を捨て、新たな勉強法を自分で編み出したから」だと記しています。

新たな勉強法とは、「答えを暗記する」方法です。通常なら、問題を解いて答えを確認しますが、私は、「答えを見て暗記し、問題を見て答えを思い出す」というやり方に変えました。(「はじめに」より)

試験では、正しい答えを書くことができれば合格できます。たとえその時点で理解していなかったとしても、覚えた答えを書いて合格さえしてしまえば、理解する時間は後からいくらでもとれるということ。そんな考え方に基づいて考えた暗記術を利用し、著者は短期間の勉強法で司法試験に一発合格できたのだというのですから驚きです。しかもこの方法は、社会に出てからのほうが効果的に使えるのだとか。

第1章「勉強するなら、『暗記』が一番の近道である」から、すぐに利用できそうな暗記術をチェックしてみましょう。

「覚える」よりも「思い出す」を最優先する

「どんな勉強法も、結果を出せなかったら意味がない」。それが著者の持論です。結果とは、試験のある勉強においては合格すること。どれだけ暗記できても、その内容を思い出せず答えを書けなければ合格できないわけです。

そして同じことは、試験勉強以外にもいえるといいます。結果を出すコツをどれだけ頭に入れても、それを思い出して実践できなければ、結果には結びつかないということです。つまり結果を出すためには、「覚える」よりも「思い出す」ことのほうが大切だという考え方。

では、「思い出す」とは具体的にどういうことなのでしょうか? 「暗記をする」「真似る」という段階においては、「答えを見る→問題を見る」ということになるでしょう。しかし「思い出す」を優先する場合は順序が逆で、すなわち「問題を見る→答えを思い出す」なのだといいます。

できるだけ短い時間で、できるだけ多くの答えを思い出せるようにするということ。これが重要なポイントで、暗記術の最大の目的は、「答えを思い出すこと」だとすら著者は断言しています。(52ページより)

スピードを意識して思い出す

「あと15分あったら最後まで解けたはずなのに」など、時間が足りなかったために、解けたはずの問題が解けなかった経験は誰にでもあるもの。でも、それはとても悔しいことです。だからこそ著者は、確実に結果を出したいのであれば、思い出すスピードを上げていくことが大切だと主張しています。

たとえば試験時間が1時間だとしたら、45分でやってみる。1問1分かかっていたなら、それを30秒で解けるようにするなど、「思い出す時間」をより短くしていくということ。最終的には、問題を見た瞬間にパッと思い出せるようになることを目指すべきだといいますが、もちろんすぐにできなくても問題なし。

まず大切なのは、どのくらいの時間がかかっているのかを把握し、少しずつスピードアップしていくこと。このトレーニングを繰り返していけば、試験本番でいつもより時間がかかったとしても、慌てることなく余裕を持って問題を解くことができるそうです。(54ページより)

夜5分→朝5分の「思い出し」を繰り返す「記憶出し入れ術」

暗記に「繰り返し」が大切であるのと同じように、それは思い出す作業においても重要な意味を持つのだと著者。「人間は忘れる生き物」なので、その日頭に入れたことは、その日のうちに思い出さないと、ほとんど忘れてしまうもの。しかし著者の場合、夜5分→朝5分の「記憶出し入れ術」を活用することによって、圧倒的な効果を実感したというのです。

それは、夜寝る前の5分間に、その日覚えたことを箇条書きにして整理するというもの。脳科学では「記憶は睡眠中に定着する」といわれているため、この寝る直前のタイミングがベストなのだそうです。

そして翌日の朝5分間に、昨日覚えたことを、書いた内容を見ずに思い出すようにする。なお、思い出せなかったら、見てもかまわないのだとか。できないところは再度見なおし、また思い出してみることが大切だということです。この「記憶出し入れ術」を繰り返すことにより、徐々に思い出す力が養われ、記憶もさらに定着していくようになるといいます。(56ページより)

時間の感覚を空けて思い出す「記憶引き出し術」

夜5分→朝5分の「記憶出し入れ術」の場合、思い出すまでの時間は(睡眠時間によっても違うものの)だいたい8時間程度。そこで次は、この間隔を1日、2日、3日…と、少しずつ長くしていくことを著者は勧めています。

たとえば水曜日に勉強したことを夜寝る前の5分間に書き出し、木曜日の朝5分間に思い出したら、次は金曜日の午前中、その次は日曜日の午前中、次は翌週水曜日の午前中に思い出すということ。期間は最長1週間を目安にするといいそうです。

思い出す作業をしなければすぐに忘れてしまうはずの「短期記憶」も、この繰り返しを行うことによって、時間が経っても忘れにくい「長期記憶」になっていくといいます。くりかえせばくりかえすほど、思い出す時間はどんどん短くなっていくということ。そして最終的には、一瞬で思い出せるようになることも可能だとか。

間隔を空けても思い出せるようになったら、それは記憶が深く定着した証。そこまでくれば、もう滅多なことでは忘れず、記憶を早く引き出せるようになるといいます。(58ページより)

1ページ1秒でパラパラ見る

これはいわゆる速読ではなく、「見る」ことにポイントがあるのだそうです。問題集や参考書を1ページ1秒くらいの速さでパラパラとめくっていき、目に入ってきたワードの意味や答えを思い出していくという方法。コツは、見るワードを1ページ1ワードに限定すること。太字になっているもの、自分でマーカーをつけた箇所など、重要なワードに絞ることが大切だというわけです。

見て思い出せなくても途中で手を止めず、その場でサッと付箋をつけるだけにして、最後まで一気にめくる。そしてあとから、付箋を貼ったワードの復習をするという順序です。

この方法は、思い出しのトレーニングであり、「どれくらい早く思い出せるか」のテストにもなるそうです。そして慣れてくると、さらにスピードアップして見ることができるようになるのだといいます。たとえば著者の場合、1回目は横に付箋を貼り、2回目は上に貼り、色は3パターン用意して、重要度に分けて使い分けているのだとか。(60ページより)

誰かと対話をする

学んだことを思い出す最良の方法は、「人に教えること」。覚えたことを言葉で説明できなければ、ちゃんと覚えたことにはならないだけに、頭のなかだけで思い出すよりも確実に知識を身につける方法だと著者は解説しています。

そこで、まずは覚えた内容を整理してから、人に話してみることが大切。他人の反応は予測がつかないものなので、自分が自信を持って説明したことも「わからない」といわれるかもしれません。しかしそれは「自分がどこをわかっていないか」を明確にしてくれたということでもあります。そこで、落ち込むのではなく、逆にチャンスと捉えるべきだというのです。

身近に相手がいない場合は、一人二役でやってみたり、フェイスブックやツイッターなどのSNSを使って発信するのも手。ポイントは、一方的に話すのではなく、誰かに伝えることを意識して「対話」をすること。相手とのキャッチボールがあってこそ、より効果があるわけです。(62ページより)

覚えずに暗記し、思い出すという発想は、たしかに大胆。しかし、そのメソッドを使いこなすことができれば、勉強の効率を上げることは決して不可能ではなさそうです。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2016年11月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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