【児童書】『わたし、お月さま』青山七恵文、刀根里衣絵
[レビュアー] 産経新聞社
■自分が輝けるのは…
〈きょう、とってもいいことを思いついたの〉
ひとりぼっちはつまらない。だから、ずっと前に、つやつやのドーナツを持ってわたしに会いにきてくれて、おもしろい地球の話をたくさん聞かせてくれた宇宙飛行士さんに、お礼を言いにいこう。
〈ひゅーん!! わたしは小さくなって、地球に飛んでいきました〉
ぽーん、ぽーんと子供たちの間をはねまわって、ネコにくわえられて、次はトリに運ばれて…。宇宙飛行士を探す「お月さま」の旅が始まった。
〈ぞうさんの首かざりになって、水あびをしたり…海にもぐって、貝がらのなかにかくれたり…車のタイヤになって、さばくをたんけんしたり〉
それはとても楽しい時間だったけど、その間、お月さまのいない夜空は…。
不在、記憶、冒険、自分らしさ…心を揺らすエッセンスが詰まった物語。大人が読んでも響くのでは。やわらかで深みのある絵が、作品世界に心地よくひたらせてくれる。とくに青色の夜景が圧倒的。(NHK出版・1600円+税)