上映ガイドやカタログのたぐいならともかく、映画館が本格的な本を作るのは珍しい。12月21日創刊予定の「ジャックと豆の木」は、横浜・黄金町のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」が、年4回の季刊誌として発行するムックだ。責任編集を務めるのは、映画のポスターなどを手がけてきたデザイナーの小笠原正勝さん(74)。「映画や映画館の状況が変わっていく手がかりになってくれればいいかなと思っています」と力を込める。
発端は、ジャック&ベティ支配人の梶原俊幸さん(39)から、今年25周年を迎える記念に何かアイデアはないかと持ちかけられたことだった。横浜市在住の小笠原さんは、日ごろからこの劇場に足しげく通っており、前身の名画座時代を含めて60年の節目の年だった4年前には、劇場横の看板をデザインしたというつながりもある。
「特集上映はよくあるので、本を出してみたらどうだろうと持ちかけた。梶原さんは逡巡(しゅんじゅん)したと思うが、しばらくしてやってみましょうと言ってくれた。4月ごろから具体的に動き出しました」と小笠原さん。
映画館が作る本ということでライブ感を出そうと、インタビューや対談、座談会などを中心に構成。「だれかの木琴」の東陽一監督と主演の常盤貴子ら映画の作り手から、各地の映画館に配給、宣伝と、映画に携わるさまざまな人々を網羅した。「いろんな人に話してもらえば、ぶつかったり共鳴したりすることが出てくる。観客と映画館と映画の3つが交差することを考えました」と狙いを語る。
地方の映画館としてはかなり思い切った事業だが、梶原さんは「映画館の存続は全国の問題で、映画全般のことを考えていかないといけないという思いがあります」と決意を口にしていた。
創刊号は144ページで価格は考慮中。当面はネット販売のほか、賛同する映画館に置いてもらう予定だ。
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