小学校中退、拾った新聞で文字を覚えた「セーラー服の歌人」の歌集が話題【文芸書・ベストセラー】

テレビ・ラジオで取り上げられた本

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 11月20日~11月26日のAmazonの文芸書売り上げランキングが発表され、第1位は第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの『コンビニ人間』となった。

 第2位は平野啓一郎さんの40代の切なすぎる恋愛を描いた『マチネの終わりに』。第3位は巨大自動車企業をモデルにした小説『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』となった。

 4位以下で注目は7位にランクインした『キリンの子 鳥居歌集』。26日に放送されたテレビ東京の番組「わたしはワケあり成功者~ドン底からの逆転学~」で取り上げられ話題に。著者の鳥居さんは2歳で両親が離婚、その後も母親の自殺や預けられた施設での虐待を経て、10代後半で天涯孤独となりホームレス生活となった。捨てられた新聞で文字を覚え独学で短歌を学んだ鳥居さん。学校に行けなかった悔しさからセーラー服を着て活動を続けている。壮絶な体験から絞り出された鳥居さんの歌は多くの人に居場所や逃げ場を与えているという。作家の 大竹昭子さんは鳥居さんの歌を「言葉のなかに運動があり、それが瑞々しい生命感を放っている。」と評している。

大竹昭子さん(作家)レビュー
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 この若き歌人のことは、彼女の半生をたどった新聞の連載で知り、驚いた。その鳥居の初歌集。タイトルは「目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ」という歌からとられている。キリンの首の長さ、睫毛の長い瞳がまず思い浮かび、その毛の色が月の光と結びつく意外性に満ちたイメージが…
https://www.bookbang.jp/review/article/509116
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1位『コンビニ人間』村田沙耶香[著](文藝春秋)

 36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて……。現代の実存を軽やかに問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。第155回芥川賞受賞。(文藝春秋ウェブサイトより抜粋)

 Book Bangでは写真家の長島有里枝さんと、文芸ジャーナリスト佐久間文子さん、書店員さんによる書評が掲載されている。

長島有里枝さん(写真家)レビュー
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異質な自分をめぐって
社会生活のあらゆる場で、自分が「異質」だと思い知らされているのに、自分のなにが「悪い」のかはいつまでたってもわからない。芥川賞に決まったこの作品の主人公を通して、見えてくるのは自分にも馴染(なじ)み深い、そんな世界だ。…
https://www.bookbang.jp/review/article/516453
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佐久間文子さん(文芸ジャーナリスト)レビュー
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ひっそり異議を唱える芥川賞受賞作『コンビニ人間』
「コンビニ人間」と聞いて、あなたはどういう人間を想像するだろう。他人に都合よくつかわれる人? いつもコンビニにいる人? それともコンビニのご飯ばかり食べている人だろうか。
 本書の主人公、三十六歳独身の恵子はそのいずれにも当てはまる、べテランコンビニ店員である。一つの店舗に十八年という勤続期間の長さは「コンビニのバイト」というどこの街にもいる透明な存在に特別な重みを与え、バイト仲間や学生時代の友人からの「なぜ?」という質問を誘発してしまう。…
https://www.bookbang.jp/review/article/517103
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渕書店さんレビュー
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「人生それぞれ。何が悪い?ゴーゴー!!」
主人公の周囲に対する冷めた温度感は読者を妙に安定させる。清々しくて心地いい。社会学的見地から読めばまた別の読みかたも生まれるのであろうがそんな読み方はしなかった。彼女の生きざまを「障害」とみる見方もあるし、彼女の周囲はそう考えるわけだが――。…
https://www.bookbang.jp/review/article/517515
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2位『マチネの終わりに』平野啓一郎[著](毎日新聞出版)

天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。(毎日新聞出版ウェブサイトより)

 Book Bangでは慶應義塾大学専任講師の川村文重さん、東京大学教授の安藤宏さん、ライターの吉田大助さんらによる書評と平野さんのインタビューが掲載されている。

川村文重さん(慶應義塾大学専任講師)レビュー
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 人生という舞台において、ある時期に繰り広げられるのが、白昼の夢幻劇のように儚く、儚いからこそ忘れえぬ美しい交感の物語であったならば、その後には何が残るだろうか。その追憶に、当人はいかに囚われ続けてゆくだろうか。そして、そこから何が始まるだろうか。…
https://www.bookbang.jp/review/article/516783
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安藤宏さん(国文学者・東京大教授)レビュー
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更新、上書きする恋愛
 瀟洒(しょうしゃ)で、すがすがしい恋愛小説だ。
 世界的なギタリストの男と、一線で活躍する国際ジャーナリストの女。二人は深く愛し合っているが、運命のいたずらで行き違い、異なる相手と結婚してしまう。しかし行き違いは単なる偶然ではない。すでに自分の世界を持ち、社会的な分別も弁(わきま)えてしまった大人の男女が、それぞれ相手の世界に…
https://www.bookbang.jp/review/article/515406
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吉田大助さん(ライター)レビュー
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 恋愛小説ウォッチャーとして、伝えずにはいられない。平野啓一郎の長編『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)は、今年最高の恋愛小説だ。
 三八歳の天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、二歳年上の小峰洋子。二〇〇六年の冬、二人はコンサート終了後の楽屋で出会い、打ち上げの席で意気投合する…
https://www.bookbang.jp/review/article/514468
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平野啓一郎さんインタビュー
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 気がついてみると、長くなりましたね。小説家は、とにかく継続的に仕事をしていけるかどうかがすべてだと思うんです。1年間で100万部売れるよりも、10年間で100万部売れたほうが絶対にいい。なぜなら、10年間続けた先でしか到達できないような思想的な深みや技術的なものがあるからです。…
https://www.bookbang.jp/review/article/516513
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3位『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』梶山三郎[著](講談社)

創業家VS.左遷サラリーマン! 日本の救世主は、ハズレ社員だった。気鋭の経済記者が覆面作家となって挑む日本最大のタブー「27兆円企業」に迫る!「失われた20年を、高度成長期並みに駆け、世界一となったあのトヨトミ自動車が潰れるときは、日本が終わるとき。日本経済最後の砦・巨大自動車企業の真実を伝えたいから、私は、ノンフィクションではなく、小説を書きました」(梶山三郎)(講談社ウェブサイトより)

 Book Bangでは上智大学文学部教授の碓井広義さんによる書評が掲載されている。

碓井広義さん(上智大学文学部新聞学科教授)レビュー
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 初めて目にする著者だが、覆面作家だ。実は現役の経済記者だという。梶山三郎という名前は、梶山季之と城山三郎のミックスではないかと勝手に想像している。梶山には新車開発の裏側と産業スパイの活動を描いた出世作『黒の試走車』があり、城山にも本田技研の海外進出をモチーフにした小説『勇者は語らず』がある。…
https://www.bookbang.jp/review/article/521789
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 4位以下は次の通り。

4位『掟上今日子の旅行記』西尾維新[著](講談社)

5位『みかづき』森絵都[著](集英社)

6位『恋のゴンドラ』東野圭吾[著](実業之日本社)

7位『キリンの子 鳥居歌集』鳥居[著](KADOKAWA)

8位『カエルの楽園』百田尚樹[著](新潮社)

9位『黒い巨塔 最高裁判所』瀬木比呂志[著](講談社)

10位『空に住む 三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE CD付き』小竹正人[著](講談社)

Amazon文芸書売り上げランキングより 集計期間11月20日~11月26日〉

BookBang編集部

Book Bang編集部
2016年12月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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