その時、世界では何が起きていた!?──日本史と世界史を「ヨコ」のつながりでひも解く

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日本では、日本史と世界史は別々に教えられ、並列で見る機会が少ない。しかし、両者は同じ時代を歩んでいるという視点で眺めれば、浮かび上がってくる意外な事実の多さに驚かされる。このような視点で、日本史と世界史を「ヨコ」のつながりで解説した『一気に同時読み!世界史までわかる日本史』の著者であり、歴史作家の島崎 晋氏に、日本史と世界史を同時に読むメリットをうかがった。

■「日本史・世界史」同時読みのすすめ

「女王・卑弥呼が遣使したころ、中国は「三国志」の時代だった」
「大化の改新の頃、ササン朝ペルシャが滅んだ」
「日本で武家政権が誕生した頃、中東で十字軍とイスラム諸国家が戦っていた」
「豊臣秀吉が関白になった頃、イギリスがスペイン無敵艦隊を破った」

 以上のように「日本史VS世界史」という形で挙げた、ほぼ同時期に起こったこれらは、まったく無関係の出来事ではありません。

 現代では、世界の出来事はただちに世界各地に配信され、日本の諸産業にも影響を与えるため、「世界の中の日本」ということが実感できます。もちろん、これは情報の伝播に時間がかかった時代でも同じことです。日本は独自で歴史を積み重ねてきたわけでは、けっしてないのです。

 日本は明治以来、自国史と世界史を別個の教科として教育しています。これは世界的に見れば少数派です。

 日本史と世界史が別のものであるため、賛否はありますが、地球全体を一つの共同体とみなすグローバリズムの考えは浸透しにくいという弊害があります。

 日本史に重きを置く人は自己中心的、世界史に重きを置いた人が海外礼賛という価値観に陥るのではないかという心配もあります。

 では、世界史と日本史を同時並行で学習することには、どんなメリットがあるのでしょうか。

世界の中で日本がどういう位置にあったのか――。
隣国や遠くの国々がどういう道を歩んできたのか――。
近代以前の日本と世界は意外なところでつながっていた――。

 これらのことが理解しやすくなるのです。

 歴史とはそれまで歩んできた道のことです。現状を見ただけではわからないことも、相手の歴史や文化を知れば、おぼろげながらも見えてくることが多いのです。歴史は現状を理解するのに役立つだけではなく、未来予測をするにあたっても有益な材料を提供してくれる情報の宝庫なのです。

 世界史と日本史の両方を知ることで、世界の中の日本ということや、世界と日本の今が見えてきます。「歴史は繰り返す」ということからも、未来予測も不可能ではないでしょう。

■「ヨコ」つながりで見る日本史・世界史

 日本史と世界史のあいだには、「ヨコ」のつながりのある時期とそうでない時期があります。しかし、後者の場合でも、同じ時期に世界で何が起きていたかを押さえておくことは重要です。

 冒頭に挙げた例には「ヨコ」の直接のつながりがありませんでしたが、近代以前の世界でも、時代によっては日本史と世界史、世界史のなかでもアジア史とヨーロッパ史にヨコのつながりのある例が散見されます。

 たとえば、「壬申の乱」が起きた頃、日本海の向こう側では新羅による朝鮮半島統一がなされていました。長らく分裂状態にあった中国大陸も楊氏の隋王朝、ついで李氏の唐王朝によって統一されていて、分裂時代とは比較にならないほど強大化していました。

 日本としては、朝鮮半島に派兵し、唐・新羅連合軍相手に大敗を喫した経緯から、連合軍ないしは唐か新羅のどちらかが単独で日本本土まで攻め寄せてくる可能性を考えないわけにはいかなかったのではないでしょうか。そのためには名実兼ね備えた人物に権力を集中させることが望ましく、かくして生じたのが「壬申の乱」と考えられるのです。

 この時期の日本史は東アジア全体の情勢を抜きにしては語ることのできないものだったのであり、直接の「ヨコ」つながりの格好の例と言えるでしょう。

 このように、両者は同じ時代を並行して歩んでいるという視点で歴史を眺めると、さまざまな事実が浮き上がってくるのです。これが歴史の面白さでもあり、「ヨコ」のつながりで読み解くことで、歴史への理解がより深まっていくのです。

──◆◇◆
 『一気に同時読み!世界史までわかる日本史』では、古代から明治維新までを、7つの時代に分けて解説している。それぞれ章には、日本史と世界史の略年表を掲載するなど、「ヨコ」のつながりの理解を助ける工夫が随所に見られる。同著の中で島崎氏は「近現代以前の日本史と世界史を分断することなく、人類という一つの種の歩みとして捉えることを意図した、多分に野心的な試みである」と述べており、歴史の同時代感覚を掴むには格好の一冊といえるだろう。

SBクリエイティブ
2016年12月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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