ビジネスに役立つ「雑談」ができるようになるために気をつけるべきこと

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そもそも、何を話せばいいかわからない人のための雑談術

『そもそも、何を話せばいいかわからない人のための雑談術』

著者
櫻井 弘 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784797388930
発売日
2016/10/17
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

ビジネスに役立つ「雑談」ができるようになるために気をつけるべきこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスにおける「雑談」の重要性は、しばしば話題にのぼることがあります。とはいえ実際のところ、「なにを話したらいいのかわからない」という人は決して少なくないはず。

そこで目を通したいのが、『そもそも、何を話せばいいかわからない人のための雑談術 どんな相手とも会話に困らない40のルール』(櫻井弘著、SBクリエイティブ)。話し方のオーソリティーとして、これまでにも話し方などに関する多くの書籍を残してきた著者による最新刊です。

人と打ち解けるための第一歩となるコミュニケーション、それが「雑談」です。
同時に雑談は会話の最終段階であり、雑談を制する人は人間関係を制するといえます。(中略)でも、雑談は、決して難しいものではありません。ちょっとしたコツさえ学べば、どんな人でも、簡単にうまくなれるのです。(中略)だから「会話上手」に生まれ変わる必要など、まったくありません。(「はじめに」より)

特徴的なのは、雑談テクニックにおいてやってしまいがちな会話の失敗例を[BAD]例として、そして、それをどう改善すれば雑談がうまくいくかを[GOOD]例として比較している点。両者を参考に、「自分がその場で会話をしていたら、どういうだろう?」とシミュレーションして、雑談のコツをつかんでいくことができるわけです。第1章「これで誰とでも楽に話せる! すっと打ち解けられる雑談の始め方」から、いくつかを引き出してみたいと思います。

「この話をしないといけない」から解放されよう

打ち合わせが始まる前に

[BAD]
あなた「今日、御社に伺ったのは、こういう提案がありましてね」
相手「はあ…」

[GOOD]
あなた「中央線で事故があったようですね。くる途中、電車が止まっているというアナウンスが流れていました」
相手「そうですか。それは大変ですね」
(20ページより)

効率主義でスピード優先の現代においては、ともすれば「結論第一」であるように思われがち。でも上記[BAD]のように”いきなり本題”で始めて、ビジネスの打ち合わせや商談がうまくいくことはほとんどないと著者は断言します。

取引先や仕事上でつきあっている人とのコミュニケーションの多くは、「相手のことをよく知らない」という状態で始まります。にもかかわらず、相手に好印象も持てないまま、大事なことを決めたり提案を受け入れたりすることはとても難しいでしょう。そこで使えるのが「雑談」。なぜなら雑談は、本題の前に相手をよく知り、信頼関係をつくる、ウォーミングアップのようなものだから

なお「雑談をしよう」と思ったときは、「そもそもなにから話し始めればいいのか」が木になるところではあります。しかし著者はこのことについて、「原則としては、なんでもいい」と主張しています。

ただし目的は相手との関係づくりなのですから、相手も乗ってこられるような話を投げかけることは必須。そこで参考になるのが、[GOOD]の例です。

「中央線で事故があったようですね。くる途中、電車が止まっているというアナウンスが流れていました」(22ページより)

これは、先方に行くルートの路線についての話題。相手が利用することの多い電車ということなので、相手にとっても気になる情報であるはず。もし先方が初めてこのことを知ったのなら、「営業に出ている人間たちは大丈夫か?」などと、身近に感じられる情報として捉えるかもしれないわけです。つまり場合によっては、「いい情報を与えてくれる相手だな」と好意を持ってくれる可能性もあるということ。

なお、「会話のきっかけになりやすいテーマ」としては、他にも以下のようなものがあるといいます。いずれも相手と自分との間で「共通認識できる話題」になりやすいもの。

雑談のきっかけとして使いやすい題材

1. 天候の話
自分にとっても相手にとっても、天気の影響は同じ

2. 季節・気候の話
暑い、寒いなど、相手も同じ感覚を共有している

3. 季節の自然の話
桜の開花、紅葉など、自然の話は全世代に受け入れられる

4. 年間行事の話
クリスマスやお正月などは、万人共通の話題

5. 交通ルートの話
先方へ行くルートなら、相手にとって馴染み深い
(23ページより)

ちなみに著者は、研修をするときなどにこんな雑談からスタートするのだそうです。

「みなさん、信号機を思い浮かべてください。あれは「緑」が上にありますか? それとも「赤」が上にありますか?
(24ページより)

正解は「赤」が上。しかし毎日のように目にしているはずなのに、漫然と見ている人がかなり多いものです。そして著者がこの雑談をするのは、「毎日やっているのに正しく意味を考えていないことが非常に多いから」だとか。つまり、それは雑談のネタになるわけです。(20ページより)

どうしても話題が見つからないときの特効薬

初対面の相手に対して

[BAD]
あなた「つい最近、社員旅行だったんですけど、大変でした」
相手「それはお疲れさまでした…」

[GOOD]
あなた「いよいよオリンピックが始まりますね」
相手「楽しみですね。楽しみにしている種目はありますか?」
(35ページより)

[BAD]は、相手とは関係のない自分の会社の話題。つまりこれは、相手にとっては自分との共通項を見出しにくい雑談だということになります。こうした「よくわからない話題」で始めてしまうと、相手が共感しにくい「ひとりよがりの雑談」になってしまいがち。一方、[GOOD]の例のような国民全員が関わるイベントであれば、相手も同調しやすくなるわけです。

もちろんニッチな趣味の話題や、自分が体験したとっておきの話でも、相手のツボにはまれば喜ばれることはあるでしょう。しかし、そういう話は”切り札”としてとっておくべき。まずは「一般的な話」からスタートし、相手の関心事を探していくのがいい雑談の方法だといいます。

あなた「もう街にはクリスマスのイルミネーションが点灯していますね」
相手「そうですね。この街は郊外ですが、夜のイルミネーションがきれいなんですよ…」
あなた「ライトアップがきれいなところが最近は多いですよね。この街のイルミネーションもいいですが、海外の街もなかなかいいですよ」
相手「海外の街の情報をご存知なんですか? パリなんて、本当にきれいですよね」
(37ページより)

こんなふうに話していけば、「一般的な話」から「一歩踏み込んだ話」へ、どんどん雑談を深めていくことができるわけです。

仕事相手の雑談であれば、「業界の話」「経済の話」などに、共通点が生まれやすい話題も多くあるはず。だからこそ、世のなかの動きをよく見ておくことも大切だと著者。ただし業界や経済の話であっても、どこかの会社が潰れたなどといったネガティブな話は避けるべき。よくない印象を持たれる可能性もあるので、注意が必要だといいます。(35ページより)

シンプルで平易な内容なので、無理なく要点をつかむことができるはず。自身の置かれたシチュエーションでそれを応用してみれば、いつしか雑談力が身についているかもしれません。

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2016年12月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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