「おれ緊張しぃだからなあ……」という人も、「演じるスイッチ」を入れてみるといいと思います。本にも書きましたけど、酒席が始まる前にトイレに行って、鏡の前で笑顔の練習をして、顔の筋肉をほぐしながら「今日はこういうあいさつをしよう」と心がまえをつくる。それがスイッチになります。
繊細で、緊張しやすいから、しっかりと準備ができるんですね。むしろ全然緊張しない人はちょっとどうかと思います(笑)。
──そういえば緊張して硬くなってばかりで、準備するなんて考えたこともありませんでした……。では、「できる男」はやっぱりトーク上手ですよね?
そんなことないですよ。あんまりしゃべらなくても雰囲気づくりがうまい人っていますから。繰り返しになってしまいますが、周囲との壁を無くしてにこやかに声をかけるだけで、「おれたちは仲間だよ」というムードをつくることができます。それが飲み会の流れを決める、といってもいいすぎじゃありません。
うまく話そうとか、バカにされないようなことをいおうすると雰囲気づくりができません。周囲も自信の無さを見抜いちゃう。そんな風に気にしていたら、飲み会にも、今後のビジネスにもいいことはありません。
一緒にいて楽しい人には「毒」がある
──檀さんから見て、また会いたい、また飲みたい! と思うのはどんな人ですか?
やっぱり周りも巻き込みながら、楽しそうに、おおらかに飲む人ですね。それに、会話の中に度量とか、人間的な幅を感じさせる人はもっといい。
そういう人は、酒席の場がこなれてくると、会話の中にさりげなく「毒」を入れてきたりします。社内とか業界の人間関係とか、トラブル系の話など、ちょっと秘密めいた話をしてくれる。もちろんマナーは守りつつ、笑いも取りながらですけどね。
──毒ですか! 危険な感じですね!
毒といっても単純な悪口とかゴシップじゃないですよ。人を傷つけない、ということがまず前提にあって、最後に救いのある言葉でまとめてくれる、というイメージです。
以前聞いた、ある社長さんの話は印象的でした。さんざんいろんな社員について、仕事ができないとかバカだとか悪口をいった後に、「でもね、会社ってね、優秀なヤツばっかりだと全然まとまらないんだよ。ある程度バカもいないとバランスが取れない。みんないいヤツだしね。だから会社ってすごくうまくできてるんだ」とおっしゃったんです。
「そうまとめるか!」って私にはすごく腑に落ちて、その人の度量の大きさを感じました。
この社長さんみたいに、話し相手に「新しい視点」を提供してくれる人は素敵ですね。いろいろと他人や出来事について悪くいいながらも、より大きなものの見方を教えてくれる人。こっちが本音を言っても許してくれそうな気がして、「また会いたい!」って思っちゃう。
それに、ちょっとズルいですけど、こういう方の「語録集」って、ほかの酒席でも使えるんですよね。もちろん「ある人から聞いたんだけどね」って前置きして使いますよ。語録の収集のためにもまた会いたい(笑)。
反対に、最後までまじめで人の悪口なんて絶対に言わず、きっちりしたまま帰る人もいますけど、あんまり「また会いたい」とは思わない(笑)。そういう人はたいてい、一緒にいた人たちから「なんか策略あるんじゃないの?」とか言われます。
誰も傷つけない毒を吐けることは、大物の条件かもしれませんね。
──でも人生経験が少ないので、会話に上手に毒を盛れる気がしません……。
女将さんがいるような小料理屋さんを知っていたら、そこで練習するといいですよ。年配のご夫婦がやっているなじみの食堂でもいい。安心できる状況で、ちょっと誰かをからかってみるとか、毒のある会話のトレーニングをする。これ、思っている以上に上達しますよ。ぜひやってみてください。
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