【写真集】『美しい刑務所 明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所』

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写真集 美しい刑務所 明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所

『写真集 美しい刑務所 明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所』

著者
上條 道夫 [写真]/寮 美千子 [著]
出版社
西日本出版社
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784908443015
発売日
2016/11/07
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【写真集】『美しい刑務所 明治の名煉瓦建築 奈良少年刑務所』

[レビュアー] 産経新聞社

 ■やさしいたたずまい

 古都奈良の住宅街にそびえる、中世ヨーロッパのお城のような赤レンガの建物。日本の司法制度の近代化を国際社会に示した「明治五大監獄」のうち唯一、ほぼ完全な形で現存する奈良少年刑務所(奈良市)だ。今年度で100年以上にわたった刑務所としての運用は終えるが、建物は国の重要文化財への指定が決まり、ホテルなどへの再利用も検討されている。

 本書は奈良出身の写真家、故上條道夫さんが、平成22年に撮影した同刑務所の写真約80点を収録。ロマネスク調の有名な表門はもとより、庁舎や独居房の内部から壁面の細部に至るまで、現役刑務所として稼働していた頃の貴重な写真が満載だ。中でも、放射状に5つの獄舎が広がるパノプティコン(一望監視型施設)構造を、中心の監視所から広角レンズで写した1枚には目を奪われる。

 後半部分は関係者の文集。編者で作家の寮美千子さんは「刑務所という言葉のイメージとはまるで違う、美しく、やさしい場所だったことを見ていただきたい」と話す。寮さんは同刑務所で詩の講師を務め、保存運動にも携わってきた。「単に美しい建物というだけでなく、地元住民との深い関わりも知ってもらえれば」(写真・上條道夫、文・寮美千子/西日本出版社・1800円+税)

産経新聞
2016年12月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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