さまざまな角度からカフカと彼の文学の魅力を平易な言葉で伝えてきた著者が今度は、死を友としていたカフカがなぜ自殺しなかったのかを考察する。
著者はカフカの日記、手紙、作品を時系列に沿って丁寧に読み解き、カフカの人生は「決断しなかった人」のそれであったという結論にたどりつく。著者は書く。「人生の多くのことは、白と黒の間にあります。じつに曖昧なグレーゾーンこそ、私たちが息をしている場所ではないでしょうか」
カフカの入門書としてだけではなく、凡人にとっての人生論としても興味深く読める一冊である。(春秋社・1700円+税)
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2016年12月18日 掲載
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