『書く人はここで躓く!』
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【話題の本】『増補新版 書く人はここで躓く!』宮原昭夫著
[レビュアー] 産経新聞社
■芥川賞作家を生んだ名指南
小説を書きたいのに、思うように書けない。十数年前、そんな鬱屈を抱えていた女子大生はわらにもすがる思いで書店を訪ねた。見つけたのは一冊の指南本。著者が教える創作講座にも通い、女子大生は作家への道を駆け上がる-。
この女子大生とは『コンビニ人間』で昨年夏に芥川賞を受けた村田沙耶香さん。指南本というのが平成13年に刊行された本書の元本だ。受賞後のインタビューなどで村田さんが触れて注目されたが、あいにく品切れ状態。読者の要望も多く、増補新版として先月発売された。
芥川賞作家で創作指導歴も長い著者は、小説の書き方ではなく「作り方」を徹底して説く。小説の基本は長短さまざまな「シーン」の組み合わせだ、と。興味深い「設定」だけではだめで、ある人間関係が時間の経過とともに変化し「新局面」に至ることが大事だ、とも。普通の文章の連なりを小説へと昇華させるヒントが提示されていく。
「作家には当たり前でも、普通の人は理解していない。そんな基本的かつ大事なことがズバリ書かれている」と担当編集者。この一冊から新たな芥川賞作家が生まれる日も近い? (河出書房新社・1500円+税)