女優の中江有里 浮世絵を基にした「掌編」の楽しみ方を語る

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 2月8日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家の中江有里さん(43)が出演し、月に1度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。

 この日中江さんが紹介したのは、以下の3冊。

『パブロフの犬 実験でたどる心理学の歴史』アダム・ハート=デイヴィス[著](創元社)
『日本の365日 季節の道しるべ』日本気象協会[著](マガジンハウス)
『江戸おんな絵姿十二景』藤沢周平[著](文藝春秋)

■「吊り橋理論」や「囚人と看守」実験はどのように行われた?

『パブロフの犬 実験でたどる心理学の歴史』は科学としての心理学の発展に貢献した重要な50の実験を取り上げ、わかりやすく解説した一冊。タイトルにもなっている「パブロフの犬」のテストやダーウィンの行った「ミミズに知能はあるのか?」実験、恐怖は恋心を芽生えさせるのか(吊り橋理論)や、善人は悪人になれるのか(スタンフォード監獄実験)など、著名な実験が実際にどのように行われたのか解説される。

 中江さんは「人間の心理は調べていくと、とても移ろいやすいものだなと分かるのと同時に、こういうことを知っていれば、移ろいやすいのが、状況によって引き出されているのか、あるいは本当の自分の本心なのか、ちょっと考える余地が出てくるんじゃないかなと思う」と心を見つめる上で参考になると解説した。

■気象協会ならではの歳時記

『日本の365日 季節の道しるべ』は日本気象協会が長年、蓄積した観測データなどに基づき、気象にまつわる生活の知恵と、暮らしのヒントを集めている。日々の気候の移ろいの楽しみ方や、注意点を記した暮らしの歳時記となっている。例として「春一番」という表現にも「立春から春分の間に吹く南寄りの暖かい強い風。風速8メートル以上」など気象協会ならではの細かい定義で紹介されている。

 中江さんは「月の呼び名とか旬の食材、その月の気象とか、非常にこと細かに書かれている。会話のきっかけになるようなところもあるし、一人で季節を感じるにもいい。四季の移ろいの豊かさに触れ、確かめるという意味でも、非常に役に立つ。読んでるだけでとても楽しくなる一冊」と薦めた。

■想像力が膨らむ掌編

『江戸おんな絵姿十二景』は時代小説家の藤沢周平が12枚の浮世絵から想像力を駆使し、季節に対応した12の物語を綴った一冊。登場する浮世絵は鈴木春信「雪中縁端美人」や喜多川歌麿「傘さす男女」や鳥文斎栄之「青楼美撰合 初買座敷之図 扇屋内滝川」など。短編よりもさらに短い掌編が収められており、中江さんは「この先、どうなるのかなっていう、分からないところで終わってしまう。その分余韻が残るわけです」と解説。そして読み終わってから絵を眺めると更に想像力が膨らみ、見え方が変わってくると同書の楽しみ方を語った。

 また時代小説全般について「今と状況が違うけれども、やっぱり通じ合うのは、人の心なんだと感じます」と語ると、番組司会の島津有理子アナウンサー(43)も「だからこそ現代の私たちが読んで、その時代の生活を想像して、胸に刺さる、染みるものがあるんでしょうね」とコメントした。

 今回中江さんが紹介した3冊はいずれも放送中からネット書店への注文が殺到し、8日現在ネット書店Amazonではいずれも在庫切れとなっている。

ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に1度放送される。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年2月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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