【児童書】『あめ』イブ・スパング・オルセン作、ひだにれいこ訳
[レビュアー] 産経新聞社
■科学と詩情が融合した物語
『つきのぼうや』で知られる国際アンデルセン賞作家のオルセンが1963年に発表した名作の邦訳だ。
シャロッテが窓の外を見ていると、大粒の雨が降っていた。特別大きな雨粒が彼女のメガネの上に落ちたので、彼女はメガネを外してレンズをふこうとした。すると、目の前に人間の形をしたふたつの雨粒が立っていた。メガネをかけたバラバラと、いとこのボトボトである。彼女が雨の降る仕組みについて雨粒たちに尋ねると、彼らは楽しそうに雨だけでなく雪やひょうの降る仕組みまで説明してくれる。こんな具合だ。「とびきりさむい日には もこもこの 毛皮をまとい、ふわりふわりとしか おりられない」「春や夏でも たまに 空のうえが さむいことがある。すると 毛皮をきるひまもなく ぼくたちは こごえて おっこちちゃう」
科学と詩情が融合した物語と温かな絵。子供たちはきっと目を輝かせるに違いない。(亜紀書房・1300円+税)
桑原聡