『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』
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【聞きたい。】栗原景さん『東海道新幹線の車窓は、こんなに面白い!』
[文] 産経新聞社
■予約していても座らない
「鉄道ファンの間では新幹線は人気薄。ビジネスライクで旅情も少ない印象を持たれている。でも東海道新幹線の旅はすごく面白い-ずっとそう力説してきましたが、まさか本になるとは思いませんでしたね」
不思議な広告看板、謎の発射台、海側の席から眺める「左富士」、幻の新駅予定地、ちょっと変わった名所旧跡…。東京-新大阪間で車窓から見えるユニークな82カ所をセレクト。現地へ足を運んだり関係者から話を聞いたりして、そういう風景ができた理由を写真とともに紹介していく。
「私が勝手に面白がっているだけなので、どう説明すればいいかなぁ…と迷いながら連絡するんですが、意外に皆さんノリノリで答えてくださって」
1日約45万人が利用する日本の大動脈。その乗客に見られることを意識した建造物が沿線のあちこちに。開通当時の社会的要請による「急カーブ」とか「並走区間」の話など、歴史的証言を聞く気分だ。目に入っていても、ちゃんと「見て」はいなかったものに気付かせてくれる。
取材を始めたのは約8年前から。別の用事で乗ったのも合わせると、もう100往復はしているという。車窓撮影のときは「グリーン車に乗れるきっぷがあっても座らない」。デッキに立って、カメラのシャッターを切り続ける。1回の乗車で撮影数は1万枚超。あとで写真を見返すと発見が多いことに気付いて以来、そうしているという。
そんな熱心さのおかげで見つけたのが「米原のトトロ」。車内販売員の間で話題になっていることは知っていたが、場所も形態も謎だった。ところがある日、写真を繰っていると…「見つけたときは感動しましたねえ」。どういうものかは本書で確かめてください。
「ブラインドを下ろしている人も多いですが、ときどき車窓を見てもらうと、きっと楽しめますよ」(東洋経済新報社・1000円+税)(篠原知存)
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【プロフィル】栗原景
くりはら・かげり フォトライター。昭和46年、東京生まれ。小学3年から一人旅をしていた筋金入りの“乗り鉄”。出版社で鉄道・旅行関連書籍の編集に携わり、現在はフリー。