【手帖】美術の泰斗・土方定一を回想

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 美術評論家、美術史家として昭和に活躍した土方(ひじかた)定一(1904~80年)をオマージュするエッセー集『芸術の海をゆく人 回想の土方定一』(酒井忠康著、みすず書房・4600円+税)が昨年末に出版された。

 著者は土方の身近で薫陶を受けた美術評論家で世田谷美術館の館長。土方が神奈川県立近代美術館の副館長時代に学芸員として就職。その後、館長となった師に付き添い画家のアトリエについていったり、出版社に原稿を届けたり、ときには書斎の本の虫干しを手伝ったりもして公私ともに支えた。

 土方は『ブリューゲル』や『ドイツ・ルネサンスの画家たち』の著書のほか、館長時代には知られざる明治美術を紹介する展覧会を行い、日本の近代美術の研究に貢献した。さらには『現代イタリアの彫刻』など、美術評論も数多く手がけた。

 著者は「好奇心の旺盛さと関心の広さにかけては、人後に落ちないところのある人だった」と記し、美術の泰斗の人間性や仕事を浮かび上がらせる。師匠の死後40年近くなり、いまや著者も高名な美術評論家になった。「いまなお師の影のなかにいる」と述べる。師匠への敬愛が満ちている。

産経新聞
2017年2月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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