『さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで』
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【話題の本】『さよなら、カルト村。』高田かや著
[レビュアー] 産経新聞社
■驚きの実体験に反響、第2弾
「所有のない社会」を理想とし、農業を基盤としたコミューンで生まれ育った著者の実体験を描いたコミックエッセー。両親と離され、食事は1日2食、体罰は当たり前という小学生時代を振り返った前作『カルト村で生まれました。』は反響を呼び、増刷を重ねた。「続きを読みたいという声が殺到しました」と担当編集者。本作では思春期を経て、19歳で共同体を離れて一般社会で暮らし始めるところまでを明かしている。
男女交際は禁止。義務教育は一般の学校で受けられるが、高校には行かず農作業などに励む。音楽を聴いたり、一般の本を読んだりすることにも制限が。とはいえ年頃の子らは規則をかいくぐり、著者も隠れて本をむさぼり読む。そして、次第におぼえた共同体への違和感、迷いなど、自立へ向かう心の動きを丁寧につづっている。
カルトというと狂信的イメージが強いが、共同生活の楽しさや労働の喜びなども、ほのぼのと表現されている。すすんで「村」に残る選択をする子供も少なくなく、幸せのかたちは一様ではない。
今、親の宗教や思想信条が“2世”に与える影響に注目が集まっている。その意味でも示唆に富む本といえる。(文芸春秋・1000円+税)
黒沢綾子