『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』
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『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』荒川佳洋著
[レビュアー] 産経新聞社
富島健夫の本で性を教えられた人は少なくない。官能小説やジュニア小説、そして純文学も「どれもがひとつの椅子で富島健夫の文学として、辻褄(つじつま)が合っていた」と分析する著者が、流行作家・富島の宿命を追った評伝だ。
早大を出て芥川賞候補にもなった富島はある種の芸術意識が希薄で、売り込みも苦手。依頼があればほぼ書いたという。築いた特異な位置は、真っ当に評価されにくかった。『おさな妻』は文学作品として優れていたにもかかわらず、毀誉褒貶(きよほうへん)に包まれた。
希代の作家・富島の人物像を著者が丹念にすくい上げる。(河出書房新社、2900円+税)