“日本一過激な大学”が教える、組織を一枚岩にするマネジメント法――なぜ超厳しい上下関係でこそ人が育ち、チームはまとまるのか?

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防大は、自衛隊の幹部自衛官を養成する防衛省の施設等機関として位置づけられています。つまり、自衛官の育成学校です。

自衛隊といえば、国家の緊急時に最も活躍する防衛組織。他国からの武力攻撃があった際の防衛出動、大きな災害が発生したときの救助・支援活動をはじめ、その活動は多岐にわたります。

彼らは自らの命をかけて、公共の秩序を守るために活動します。その仲間たちは、命を預け合う存在といえます。だからこそ、組織を一枚岩にするメソッドとリーダーシップの磨き方が、防大で教わることの中に埋め込まれているのです。

防大名物「棒倒し」は究極の組織プレーだった

本書は大きく3つのトピックにわけられています。まずは「人材の育成」、次に「組織の運営」、最後に「リーダーと部下の関係」です。ここでは「組織の運営」のメソッドを1つ、エピソードを通してピックアップします。

組織はチームプレーが前提です。個人が勝手に行動しはじめるとチームは途端にうまくまわらなくなるものです。それぞれが与えられた役割をもち、任務を全うすることが大事。そのためにリーダーは、部下たちに与える役割の「目的」「重要性」「必要性」を伝える必要があります。

濱潟さんはこの役割分担の重要さを防大名物「棒倒し」から学んだといいます。

「棒倒し」は防大の大学祭「開港祭」の名物で、毎年ニュースでも取り上げられているので知っている人も多いでしょう。

チーム対抗戦で、制限時間2分以内に相手の棒を30度以上傾けたチームが勝利となります。各大隊には「棒倒し総長」というリーダーがいて、1チームは総長の下に150人で編成。その中で攻撃陣と防御陣に分かれます。

とにかく攻め込めば、とにかく守り切れば……という無計画な組織作りでは、勝つことはできません。

相手の棒に向かって突撃する「突攻」、自軍の棒が倒れないように棒を支え続ける「棒持ち」、棒の上に乗り、襲いかかってくる敵の突攻をけり落とす「上乗り」など、さまざまな役割があり、それぞれが自分が任せられた役割を全うできなければ負けてしまうのです。

何も恐れず、とにかく試合が終わる最後の瞬間まで自分の使命を全うしようとする。それが勝ちにつながるたったひとつの方法である。

こうした意識が全体に浸透しているチームは強いのです。

確かに自衛隊は仲間たちと命を預け合い、公共の秩序を守る任務にあたります。一人が勝手なことをしてしまえば、その仲間たちにも深刻な影響を与えてしまうことは想像に難くありません。

濱潟さんはこの経験を活かし、一般企業でも活かせる防大式マネジメントとして「役割分担ルール」を以下のように落とし込んでいます。

・リーダーが役割1つひとつの「目的」「重要性」「必要性」を明確にする
・役割を果たしたときのイメージをチームで共有している
・一人ひとりが最大のパフォーマンスを提供している
・無駄な役割なんて1つもないとチーム全体に浸透している
(『防衛大で学んだ無敵のチームマネジメント』P128より引用)

そしてリーダーにはもう1つ、部下が最大限に活躍できる「場所」を提供するという、役割があります。

人間には向き不向きがあります。その人に向いてない役割を与えてしまっては、パフォーマンスは最大化しません。その部下はどんな人なのか、リーダーはしっかり見定める必要があります。

この他にも、本書には「全員にやりがいをもたせる」「誰でも守れるルールを徹底する」「マニュアルは日々更新する」などの普遍的だけれど見落としがちなマネジメントメソッドが、著者が防大時代に体験したエピソードとともに説明されています。

***

1982年生まれの濱潟さんは、防大卒業後に就職したIT系ベンチャー企業で営業職として入社2年目から5年目まで売上No.1を達成。6年目に営業部長に就任し、2008年のリーマン・ショックの後遺症にあえぐなか、防大時代に学んだチームや個人の能力を劇的に引き上げる「防大式マネジメント」を導入し、2年間で会社全体の売上を160%アップさせることに成功。一時は80%を超えていた離職率も6%まで低下したといいます。

もしかしたら、防大での過激なエピソードが先行し、「これはちょっと部下がついていけないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、濱潟さんの考え方は実にシンプル。「今いる社員を一流に」をモットーに、場当たり的な「気合」や「根性」といった精神論や、リーダーから部下に対する一方的な「押し付け」には「NO」というマネジメント手法です。

どんな社員でもポテンシャルを秘めています。リーダーが、そのポテンシャルを引き出す覚悟を決めることで、組織の成長は始まります。全員が活躍できるチームを作るために苦心しているリーダーの皆さんにとっては少し、刺激的かもしれませんが、マネジメントの本質に触れることができるはずです。

日本実業出版社
2017年3月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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