食べたい気持ちを抑える「食欲鎮静術」とは?

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一生太らない魔法の食欲鎮静術

『一生太らない魔法の食欲鎮静術』

著者
松尾 伊津香 [著]
出版社
クロスメディア・パブリッシング
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784295400592
発売日
2017/02/18
価格
1,518円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

食べたい気持ちを抑える「食欲鎮静術」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

一生太らない魔法の食欲鎮静術』(松尾伊津香著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、パーソナルダイエットトレーナーとして、リバウンドや食欲に苦しむ人たちを救うお手伝いをしているという人物。性別・年齢を問わず、これまでに100人以上のコンサルティングを担当してきたのだそうです。

そんななかで気づいたのは、どのお客様も「我慢すればやせられる」という同じ勘違いをしていることだったのだとか。実際は、慣れない運動や無理な食事制限をがんばってみたとしても、いつかは我慢の限界が訪れるもの。一時的に減量できたとしても、運動や食事制限をやめてしまえば、あっという間にリバウンドしてしまうわけです。

そして、リバウンドを繰り返してしまう原因は、食欲をコントロールできていないこと、もっといえば「本当の味わい方」を知らないことにあるのだと著者は主張しています。どういうことなのでしょうか?

リバウンドしないダイエットに必要なのは、過度な食事制限ではありません。大切なのは、「食べたい」という気持ちをコントロールする力「食欲鎮静術」を身につけることです。字面だけ見るとなにやら難しそうな印象を受けるかもしれませんが、大丈夫です。なにも難しいことはありません。やることは、ただ、目の前の食事をおいしく味わう。これだけです。(「はじめに」より)

つまり食欲を抑えられないのは、「その食事に満足していないから」だということのようです。だから、一度「本当の味わい方」を知ってしまえば、食欲は自然と収まっていくというのです。この基本的な考え方を頭に入れたうえで、第2章『本当の味わい方』を知る」を見てみましょう。

まずは「よく噛む」をやめてみる

「やせたいなら、よく噛みましょう。そうすれば少量でもお腹いっぱいになります」という話をよく聞きます。噛むという行為は満腹中枢を刺激するので、噛むことで満腹感が得られやすくなるのは事実。ところが、よく噛もうとすることが、よく味わおうとすることとイコールかというと、そうではないと著者は断言するのです。

よく噛むと、ちょっとの量で満腹になれる。私はこのことにずっと疑問を抱いていました。だって、よく噛むってすごく難しいのです。
実際に私も「よし、よく噛もう。そうすればちょっとの量で満足できる」と心に決めて、何度も「よく噛む」を試みました。(中略)そしてある時、ふと気がついたのです。「よく噛もう」とすればするほど「よく噛めない」ということに。(中略)噛むという行為は、意識を向ければ向けるほど難しいようにできているのです。
特別な機械がいるわけではないし、難しい技術が必要なわけでもない。それなのに、ほとんどの人がよく噛めていない。これは意識するポイントを間違っているために起こります。(53ページより)

歯そのものでは、食べものの味を受け取ることはできません。そして噛むということは、「歯を動かす」というより「顎を動かす」ことに近いはず。だから、本当に味わおうと思うなら、よく噛もうと意識するのではなく、まずは舌先に食べものをあてるべきだと著者は主張します。

1回目から確実に、舌先にものをあてて食べると、噛む回数が圧倒的に増えるそうです。そしてそれが、食欲を鎮めるための最初のステップなのだといいます。(52ページより)

太る食べグセ、やってませんか?

食欲に悩む人は、そもそもの食べ方に肥満体質を招くクセがあるといいます。本物の味わい方とは、舌先に食べものをあてて味覚に手中することだという考え方をご紹介しましたが、リバウンドに苦しむ人たちは、無意識のうちにこれとは逆の「太る食べ方」をしているというのです。そこで著者は、次のステップをやってみることを勧めています。

1. 唾を口のなかに溜めて、舌の様子を観察してからごっくんと飲み込む。
(このとき、その下の動きを覚えておく)

2. 今度は舌先を前歯で噛む。舌先が動かないように固定し、そのまま唾を飲み込む。
(56ページより)

両者をくらべてみると、2.のほうが飲み込みにくく感じるはず。それは、なにかを飲み込むとき、私たちの舌は勝手に奥に引っ込むようにできているから。というよりも、これはクセに近いもの。「食べものを口に入れたらすべて飲み込む」という無意識のクセが、味わう機会を損ない、食欲を暴走させる原因をつくっているというのです。

しかし、舌先に食べものをあてて食べるように意識することで、こうしたクセを治すことができるのだといいます。舌先で食べものを味わおうと意識すると、舌先は自然と前に伸びるもの。すると下の奥の部分も一緒に伸びるため、食べものを飲み込むことができなくなるのだそうです。(55ページより)

味覚を研ぎ澄ます為の3ステップ

1. 食べものを口に入れて奥歯で噛んだら、
2. すぐに舌先のほうに持っていく。
3. そして、舌で味を感じながら食べ続ける。
(58ページより)

著者によれば、これが「味覚を研ぎ澄ます為の3ステップ」。決して歯の動きを止めろということではなく、「舌先に食べものが当たっているな」と感じながら食事を続けるということだとか。

実際にやってみると、ひと口で食べものの味がふわーっと広がっていくのがわかるそうです。舌先にものをあてて食べると、唾液と食べものが混ざるため、味の濃さや旨みをより強く感じるなど、食事のたびに新しい発見ができるようになるというのです。

逆にこのプロセスなしに、食べものを口の奥だけで咀嚼していると、食べものが唾液と混ざらないため、塊のまま飲み込むことになってしまうことに。固形物が喉を通過していく感覚が飲み込む快感を増大させ、食べることがやめられなくなってしまうというのです。(58ページより)

「味の向こう側」へ進むための7つのステップ

繰り返しになりますが、味わい方を変えて食欲を鎮めるためにすべきこととして著者が勧めているのは、舌先にものをあて、胃の感覚を研ぎ澄ますこと。しかし食べ方の癖をなおすのは難しく、最初はうまくいかないこともあるもの。そんな時は、次の7ステップを試してみるといいのだそうです。

1. 最初はひとり、静かなところで
2. 立ち食いはNG! 「座って食べる」が基本
3. 「頬張る」は禁止
4. 素材の形がわかるかどうかで決める
5. 温度は40〜50℃をキープ
6. 飲みものは、舌を丸めて飲む
7. お酒は「だめゼッタイ」

まずは1日に最低1回、ひとりで落ち着いて食べる。これを繰り返せば、無理なく感覚を研ぎ澄ませるようになるそうです。なお、短時間で立ったままかき込むような食事スタイルは、味覚と向き合うのには不向き。頬張るのも同じで、つまりはいろんな味が混ざり、味覚を研ぎ澄ますことができなくなるということです。

食材は、焼き魚やチキンなど「素材の形や色が残っているもの」を選ぶべきだといいます。特に和食をお勧めする理由は、食材の味がはっきりわかる料理が多いから。そして、胃からの満足感を得られるようにするのは、温度が大切。できれば40〜50℃で食べるのがベストだといいます。

飲みものは、口に含んだら、まずは「舌を丸める」ことが大切。こうすれば、こぼすことなく、飲みものの味をしっかり味わうことができるというのです。ちなみに感覚がわかるようになるまでは、お酒はできるだけ控えたほうがいいとか。(71ページより)

食欲や習慣化だけでなく、ダイエットにはさまざまな壁が存在するもの。しかしそれでも、最低限の食事の量で心を満たすことができたら、ダイエットライフはきっと心地よいものになる。著者はそう記しています。だからこそ本書においては、心を満たすサポートをしているというのです。この考え方に共感できたなら、手にとってみてはいかがでしょうか?

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年3月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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