【手帖】文学にうれしい「永住権」をいただいた

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 第68回読売文学賞の贈賞式が先月東京都内であり、『模範郷』(集英社)で小説賞に選ばれた作家で法政大学国際文化学部教授のリービ英雄さん(66)が喜びを語った。

 リービさんは米カリフォルニア州生まれ。少年時代を台湾と香港で過ごし、プリンストン大学などで日本文学を教えた。『万葉集』の英訳では全米図書賞を受賞。1989年からは日本に定住し、母語ではない日本語で創作を続けており、『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞も受けている。

 『模範郷』は、作者自身を思わせる語り手「ぼく」が、幼少のころを過ごした台湾を半世紀ぶりに訪れる様子を描く。選考委員の辻原登さんは「われわれがかつて持つことのなかった創造的批評に満ちた私小説」と評した。

 3年前に日本の永住権を取得した、というリービさんは、受賞スピーチで「永住権をいただいてから初めて書いた作品がこの『模範郷』。ある自由と落ち着きを与えられることで書けた」などとあいさつ。自身にとって節目となる小説で受賞した喜びをかみしめながら、「(受賞によって)国家から与えられる永住権ではなく、より難しくよりうれしい文学からの永住権をいただいた。死ぬまで日本語で書き続けていい、ということですから…。もうちょっと長い作品を書いてもいいかなという気持ちもある」と抱負を語った。

産経新聞
2017年3月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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