■中学時代から大のツツイスト
みなさんご存じの方はご存じで、ご存じない方はまるでご存じでないでしょうが、わたくしはTBSラジオにて現在、土曜夜十時から「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」という番組をやっております。そもそもそれより以前、ライムスターというラップグループの二〇〇六年発表のアルバム「HEAT ISLAND」の中に「ウィークエンド・シャッフル」という曲が入っていて、いずれも言わずもがな筒井康隆先生の短篇小説、かつまたそれを映画化した中村幻児監督の作品からインスパイアされた、というかパクリです。まあ、ヒップホップはパクリの文化なんでね。
「ウィークエンド・シャッフル」だけでなく、ラッパーとしての私に興味のない方には知った事かという話だと思いますが、ある時期の僕の作品にはどこかしら〈筒井康隆オマージュ〉が入っていたくらい、筒井康隆作品からの引用は多いんですよ。中学生の頃からの大ファンでした。ここはまさに新潮社のお膝元ですが、新潮社さんから「筒井康隆全集」全二十四巻(83~85年)というのが八〇年代に出ておりまして、たしか一冊一五〇〇円くらいはしたと思うんですが、中学生には高かったのに何とか毎月買い揃えたりもしました。
当時は何度目かの筒井康隆ブームでして、映画化も多かったんです。今夜観て頂く「ウィークエンド・シャッフル」も「俗物図鑑」も「ジャズ大名」もほぼその頃の作品です。その全集を十巻まで買うと、筒井先生の「最悪の接触」という短篇小説の直筆原稿のコピーが貰えた。二十四巻まで買うと、非売品のLPレコードが貰えたんです。そのレコードには、筒井先生はもちろんジャズがお好きで、ご自分でクラリネットも吹く方なので、山下洋輔さんなどとの演奏が入っていて、もう片面には自作の短篇小説「昔はよかったなあ」の朗読が入っていたんです。この、それなりにツツイストでないと手に入らないレコードをスクラッチして「グッド・オールド・デイズ」という曲を作りもしました。先生の朗読を使うのだから、この時はさすがに先生からちゃんと許可を頂きました。
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