金利は投資タイミングを教えるシグナル
ここで金利に関する重要な考え方を2つ提示しておこう。
これは、あらゆる経済活動の基礎となるものなので、しっかりと頭に入れておいて欲しい。
1)金利というものは、現時点での将来見通しを示したものである
2)利を払うという行為は時間を買うことと同じである
両者に共通しているのは時間の概念である。金利を見ることで、市場が将来の動向についてどう考えているのかを知ることができるし、金利を支払うことによって、時間を能動的にコントロールすることができる。金利を制するものがビジネスや投資を制するのは、時間を自由に操ることができるからだ。
先ほどの不動産投資のケースでは、ベストなタイミングでローンを組んで物件を買った人は、金利の動向を見て投資のタイミングを決断している。つまり金利には、今後、市場がどのように推移するのかという見通しのヒントになる情報が含まれているということになる。
また、お金があるにもかかわらずローンを組んだということは、この人の中には、ローンを組むという行為は時間を買うことと同じだという明確な認識が存在している。その点において、お金がないから借りる人とは考え方が180度違っている。
金利が高いということは、今後、物価が上がると多くの人が予想していることを意味している。物価が上がっている時は好景気であることも多いので、景気が拡大すると予想していると解釈することもできるだろう。逆に金利が下がっている時は、多くの人が今後は物価が下がり、景気が縮小すると考えていることになる。
では、ある時期、これまでの動きとは大きく乖離して金利が急低下した場合はどうだろうか。
景気や物価というのは、数日で変化するようなものではなく、半年や1年という時間をかけて状況が変わっていくものである。それにもかかわらず、ごく短い時間に、大幅に金利が下がるということは、市場参加者の心理が急激に悪化したことを意味している。すべてのケースに当てはまるわけではないが、このような時は、市場が底を打つサインになることが多い。
多くの人は、株価や不動産価格など、資産価格の推移しか見ていない。
このため、価格が急激に下落すると、この先もっと下がるのではないかといった不安が先に立ってしまい、安く買えるチャンスと認識できなくなってしまう。逆に、まだまだ下がる可能性があるにもかかわらず、安易に飛びついてしまい、含み損を抱えてしまうということもあるだろう。
もちろん金利動向を分析したからといって、将来の動きを確実に予想できるわけではない。だが金利の動きを知っているのと知っていないのとでは、判断の結果に大きな違いが出てくるはずだ。
今、説明したように、金利の動きは市場のボトムを知らせてくれる一方、市場のピークについても有益な情報を提供してくれる。
年利9%という驚異的な利回り
1980年代後半のバブル崩壊前夜、市場参加者の誰もが株価の上昇を信じて疑わなかったと言われているが、金利はそうではないことを如実に示していた。
1987年に4%台だった長期金利は上昇を続け、1990年には9%に達する勢いになった。これまでのトレンドから相当乖離した水準である。株価は一旦上昇相場が始まると、青天井で上昇が続くことがある。だが金利は、ハイパーインフレにでもならない限り、上限がある程度決まってくるので、株式や不動産よりもピークを把握しやすいという特徴がある。
実際、金利が急騰したこのタイミングが株価のピークであり、このタイミングで債券に乗り換えた投資家はごくわずかだが存在する。彼等は周囲がバブル崩壊に苦しむ中、年利9%という驚異的な利回りを長期間にわたって享受することができた。
リーマン・ショック直前も同様である。米国の長期金利は基本的には長期的な下落トレンドだったが、株や不動産価格が暴落する前の2年間はトレンドを乖離した上昇が見られた。金利の動向に注意を払っていれば、リーマン・ショックもある程度は予想できたことになる。
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