【児童書】『フリーダ・カーロ リトル・ピープル、ビッグ・ドリーム』

レビュー

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【児童書】『フリーダ・カーロ リトル・ピープル、ビッグ・ドリーム』

[レビュアー] 渋沢和彦

 ■逆境を力に変えて生きる

 激しい色彩の作品で知られるメキシコ人画家、フリーダ・カーロ(1907~54年)。本書は彼女の壮絶な人生に迫った伝記絵本。

 表紙絵のまんまるとした目玉と眉毛がつながった個性的な顔。無邪気で幸せそうな女性がフリーダだ。6歳のとき、ポリオを患い右足が不自由に。女学生だった18歳のときには、乗っていたバスが路面電車に衝突し、重傷を負ってしまう。寝たきり状態の中で、のめり込んだのが絵だった。鏡をみては自身の顔を描き続けた。やがて腕はめきめきと上達して才能が開花。憧れの有名画家のディエゴ・リベラに絵をみてもらう機会に恵まれた。彼は作品だけでなく、フリーダにもほれてしまい、やがて結婚。ニューヨークでの個展が成功し、世界的な画家へと羽ばたいていった。

 彼女の血まで描写した鮮烈な絵とは違い、本書の絵は抽象化され、明るく楽しい。生々しくないのも子供にはいい。逆境を自らの力に変えて強く生きたフリーダ。これを読んだ子は、いったいどんなことを思うのだろう。(イザベル・サンチェス・ヴェガラ文 アン・ジー・ファン絵 おびただす訳/六曜社・1400円+税)

 渋沢和彦

産経新聞
2017年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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