児童書 『ともだちのひっこし』宮野聡子著
[レビュアー] 川村達哉
■仲良し同士がお別れで
大人が読んでも目頭が熱くなる一冊だ。それは「別れ」という普遍的なテーマを、丁寧な筆致とやわらかくてリアルな絵で表現し、読者を包み込むように構成されているからだろう。
赤ちゃんのときから仲良しの「ゆうちゃん」と「ともちゃん」。ある日、ともちゃんが引っ越すことになり、ゆうちゃんは「さようなら」を言いたくなくて、ともちゃんと遊ぼうとしなくなる…。
2人それぞれ幼いながらの葛藤と、仲直りまでの過程が琴線に触れる。大切な人との別れは子供が成長していく上で不可避であろうし、それ故に人としての深みが増すのではないかと読みながら考えた。
著者は昭和51年、東京都生まれ。女子美術短期大学卒業後、子供の本専門店勤務を経て絵本作家に。平成28年『いちばん しあわせな おくりもの』で第7回リブロ絵本大賞を受けた。
本書は家族で何度も読み返したくなる書籍だろう。やがてくる友との別れに、どう向き合えばいいのか。この物語は優しく伝える。(PHP研究所・1300円+税)
川村達哉