アプレが舞台の学生犯罪ミステリ

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見たのは誰だ

『見たのは誰だ』

著者
大下 宇陀児 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784309415215
発売日
2017/03/07
価格
880円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

アプレが舞台の学生犯罪ミステリ

[レビュアー] 図書新聞

 貧しい大学生桐原と古川の二人が、貴族院議員を務め、外交官として活躍したこともある資産家宅への強盗を企む。計画実行の現場で思わぬ事態が発生し、殺人事件へと発展。唯一生き残った桐原にすべての殺人の嫌疑がかけられてしまうのだが……。冒頭で事件の模様が客観的に描写されるタイプのミステリ。桐原にまつわる疑惑の真相は分かっているので、ポイントは本人の証言を補強する証拠探しだ。それを担当する弁護士探偵・俵の推理とその裏付けは、読者をぐいぐい引き込むだけの緻密さと説得力を持っている。「アプレ」という言葉が登場する戦後昭和の風俗を背景にすると意外な結末にも納得。著者の名前は「うだる」と読む。作家としてのみならず、ラジオ番組「二十の扉」レギュラー解答者としても活躍した。(3・10刊、三二六頁・本体八〇〇円・河出文庫)

図書新聞
2017年4月22日号(3300号) 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

図書新聞

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