『研修では教えてくれない 会社で働く人の常識110』
- 著者
- アラン・ションバーグ [著]/弓場隆 [訳]
- 出版社
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- ISBN
- 9784799320600
- 発売日
- 2017/04/20
- 価格
- 1,320円(税込)
できる社員はここが違う? ビジネスパーソンが心がけるべき基本姿勢とは
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『研修では教えてくれない 会社で働く人の常識110』(アラン・ションバーグ著、弓場 隆訳)の著者は、世界最大の人材紹介会社であるマネジメント・リクルーターズ・インターナショナルの共同創業者兼CEO。
そのような立場上、「優秀な人材と認められるためにはなにが必要か?」「上司や経営者から高く評価されるにはどうしたらよいか?」というような質問をよく受けるそうです。しかし、それらに対して抽象的な答えをしても意味がないと考えているのだといいます。
なぜなら、日ごろのさまざまな言動の積み重ねが「できる社員」という評価を招くから。そこで、このテーマについて本を書こうと考えた結果として本書が生まれたというわけです。
本書には、会社という組織に属する人間として成功するためのアイデアが書かれています。どれをとっても有効性は確認済みです。とはいえ、本書のすべての提案があなたの状況にあてはまるとはかぎりません。うまくいきそうだと思う提案だけを選んでください。
今後も企業の中で生き残って成功を勝ちとるために、本書を熟読することをお勧めします。本書は、全米で最も知識の豊富な管理職や経営陣の知恵の集大成です。読者の皆さまに貴重な情報を提供することを確信しています。(「はじめに」より)
きょうはPART6「『もっとできる社員』はここが違う」に焦点を当ててみたいと思います。
自分の仕事に誇りを持て
それがどんな仕事であれ、自分の仕事には誇りを持つべきだと著者はいいます。ポジティブな自己イメージを持てば、周囲の人の自分に対するイメージにもそれは反映されるものだという考え方です。
見逃すべきでないのは、新入社員も重要な仕事をしているということ。誰かが重要な仕事だと考えたからこそ、その仕事が存在するわけであり、状況次第では平社員のほうが副社長よりも重要な働きをすることがあるのだといいます。
たとえ平凡な職務でも、上司の期待を上回ることによって新しい意味を持つこともある。(126ページより)
豊かな創造性を持つ社員が平凡な仕事に取り組んで、それを重要な仕事に変えることもあるもの。仕事ぶりが素晴らしければ、必然的に上司の目に止まることになります。だからこそ、自分の仕事には誇りを持つべきだということです。(126ページより)
仕事に情熱を持て
大成功を収めている人たちを観察すれば、仕事に情熱を持っているという共通点に気づくことができるそうです。なぜなら彼らは自分の仕事を愛しているから。その情熱が、その人の生産性に反映されるわけです。
仕事に情熱を持つと、全身にエネルギーがみなぎり、長時間労働を可能にするといいます。そういった前向きな姿勢は、好きでない仕事をしているときの気持ちとは大違い。実際のところ、嫌な仕事をしているとストレスがたまって健康を害する恐れすらあるでしょう。
ノーベル賞作家のウィリアム・フォークナーは「人間が1日に8時間もすることができる活動は仕事だけである」と書いている。1日に8時間も仕事をするのなら、何よりも好きな仕事であるべきだ。そして、好きな仕事をするためには、好きな仕事を探すよりも、自分の今している仕事を好きになるほうが早道である。(127ページより)
仕事を楽しむ人は、世界でもっとも幸せな人だとも著者はいいます。「この仕事はダメだ、自分に向いていない」と否定するのは簡単ですが、たしかに、いまの仕事を好きになることのほうが大切ではないでしょうか?(127ページより)
常に前向きな姿勢であれ
当然ながら、ネガティブな人と一緒に仕事をしたいという人はいません。そして優良企業が発展を遂げるのは、職場全体が前向きで、全社員が楽天的な気持ちで未来を切り開いているからだと著者はいいます。彼らは利益を生み出すことを目標に働き、目標を達成しようという意気込みに溢れているもの。
前向きであるべき5つの理由
1. 体内でアドレナリンが分泌され、それがさらにエネルギーを供給する
2. 仕事がさらに楽しくなる
3. 周囲の人を元気づけることができ、周囲の人もあなたを応援するようになる
4. あなたに方向性を与え、目標を達成する推進力になる
5. 心身の健康によい
(128ページより)
これら5項目は、たしかに前向きであることの意義を代弁しているといえそうです。(128ページより)
聞き上手になれ
ほとんどの人は、コミュニケーションの達人とは話し上手な人のことだと思っているもの。著者はそう指摘しています。でも、ある意味においてそれは正しいけれど、話すことはコミュニケーションの一部にすぎないともいうのです。なぜなら、聞くことも同じくらい大切なものだから。実際、聞き上手になるほうが話し上手になるよりも大切だと主張する人もいるのだとか。
自分の発言より、他の人たちの発言から多くのことを学ぶことができる。そして相手の話にじっくりと耳を傾けることは、相手への敬意とマナーのよさの証。大切なのは、会話を独占しようとせず、相手の話をよく聞くようにすること。そうすれば多くの人から、魅力的な人だと思ってもらえるといいます。
相手の話を途中でさえぎる人がいますが、それは悪い癖。自分が話す前に、ほんの0.5秒でもよいから、間を置くことを心がけようと著者。
聞き上手になる7つの方法
1. 相手と目を合わせる
2. 相手の言っていることに集中する
3. 会話から何かを学ぼうという姿勢を持つ
4. 情報を収集し信頼関係を築こうという気持ちで話を聞く
5. 相手が欲していることと必要としていることを察知する
6. 自分がしっかり効いていることを知らせるために、相手が話しているあいだ定期的にうなずく
7. 相手の話を途中で遮らないために、相手が話し終えてから自分が話し始めるまで、一瞬、間を置く
(131ページより)
この7項目は、ぜひとも心にとどめておきたいところです。(130ページより)
自分の価値を信じよ
自分の価値を信じることができれば、他の人たちもこちらの価値を信じるようになるもの。でも自分の価値を信じられないのだとしたら、他の人たちからも信じてもらえないでしょう。
ポジティブであれネガティブであれ、人々はあなたの自己イメージをそのまま反映する。(137ページより)
長期的な成功をおさめるためには、高い自尊心が不可欠。もちろん謙虚さも必要ではあるけれども、あまりにも謙虚になると自分を卑下して自滅してしまう恐れもあると著者はいいます。だからこそ、誰かからほめられたときには、喜んでそれを受け入れるべきだという考え方。(137ページより)
「基本」にはじまり「仕事」「チームワーク」「上司」「会社」など、「できる社員」のあり方をさまざまな角度から掘り下げた内容。ひとつひとつの項目がコンパクトにまとめられているため、空いた時間を利用して読み進めることも可能です。会社で働くことの意味を再確認するという意味でも、読んでおくべき1冊だといえそうです。
(印南敦史)