【手帖】「室町将軍」の歌集が復刊

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 ■「室町将軍」の歌集が復刊

 戦後、財閥解体の危機から三井家を救い、日本橋室町の三井本館に事務所を構え、「室町将軍」と呼ばれたフィクサー、三浦義一。早稲田の学生時代、北原白秋の門下生だった三浦が昭和28年に出版した歌集『悲天』(講談社エディトリアル・2500円+税)が4月末に復刊された。

 三浦は序にこう記す。「わが歌は未(いま)だ貧しい。が、『悲天』一巻は、厳しい征旅の刻々の相であり、その声調である。ことばは、誤魔化(ごまか)し得ても、声調(しらべ)は絶対に糊塗(こと)し得ない。しらべこそ真の赤裸である」

 現(うつ)し世にまた逢ふべしやうつし世に生きて寂(さぶ)しゑ死にて寂しゑ

 おとろへしわれと思ふに小夜ふかく太刀をぬぐひて起きゐたりける

 三浦の歌からは、古代のロマンチシズムと生命の悲哀がたちのぼる。保田與重郎(よじゅうろう)は解題で、「所謂(いわゆる)『歌人』とならなかつた三浦さんの作つた歌の方が、どれもこれも、まことの歌と思はれる。それほど巧みな歌でないものにも、私は無言のうちに深刻な人生的な検問を強ひられたのである。それゆゑ、私の文学史観では、三浦義一は、伴林光平以降の歌壇、つまり明治大正昭和の三代に於(おい)て数少い最も重要な歌人の一人である」と書く。

産経新聞
2017年5月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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