【手帖】『バッタを倒しにアフリカへ』

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 ■バッタ研究者のユーモラスな実験記録

 若き研究者が不慣れな土地で悪戦苦闘する本には、面白い作品が多い。その例に漏れないのが、5月に発売された『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社・920円+税)だ。マニアックさを極力抑えたユーモラスな書きぶりに徹しており、バッタの予備知識がなくても楽しく読める。

 著者の前野ウルド浩太郎は、秋田県生まれの若手昆虫研究者。幼少時からバッタをこよなく愛する著者は、バッタが多く生息するアフリカ北西部のモーリタニアでの研究を決意し、約3年のフィールドワークを実施。知っているようで意外と知らないバッタの生態を知ることができることに加え、砂漠で行う研究の過酷な実情や、干魃(かんばつ)によりバッタが全然現れてくれないなどのアクシデント、他の虫への“浮気”など、興味深いエピソードにも事欠かない。

 著者の筆名にもある「ウルド」という名称は、モーリタニアで最高に敬意を払われるミドルネームだという。この名を与えられた著者は、現地の人たちとの習慣の違いに苦しみつつ、次第に交流を深めていく。異文化交流という目線で読んでも面白い。

産経新聞
2017年6月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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