[ゴロウ・デラックス]『罪の声』はグリコ・森永事件の真相か? 徹底した取材に稲垣吾郎も感心

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 稲垣吾郎さん(43)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」に6月9日、小説家の塩田武士さん(38)が出演した。昨年第7回山田風太郎賞を受賞した塩田さんの代表作『罪の声』(講談社)刊行までの苦労が明かされた。

■フィクションかノンフィクションか?

『罪の声』は作年8月に刊行され、10月に第7回山田風太郎賞を受賞した。年末には各種ミステリランキングで軒並み上位にランクインし話題となった。2017年本屋大賞でも3位に輝いている。同作は未解決のまま時効を迎えた「グリコ・森永事件」をモチーフとした長編小説。あくまでもフィクション作品だが、これがあの事件の真相だったのでは、との感想が多数あがるほどリアリティを感じさせる作品となっている。

■構想十数年

 番組に登場した塩田さんは同作の構想は21歳のころからあり、出版に至るまでには様々な苦労があったと明かした。

 構想のきっかけとなったのは実際の事件で使用されたテープだった。そのテープには小さな子供のたどたどしい声で、現金受け渡しの指示が吹き込まれていた。テープが事件に使われたその時期、塩田さんも関西に住む4~5歳の子供だった。指示を読み上げていた子供は「僕と同い年くらい、同じ関西で生まれ育った。そう思った瞬間に鳥肌がファ~ッと立って。これはどこかですれ違っているぞ。この子の人生って一体何だろう」と考え、同作の構想が始まったと明かした。

 しかし2010年に小説家としてデビューした際、当時の担当編集者に物語の構想を話したところ、「今の塩田さんの筆力じゃ書けない」と言われ、そのときは断念したという。そこから8作品を積み重ね、2015年にようやく編集者から「そろそろやりませんか」と提案を受けた。しかし21歳から温めてきた構想だけに絶対に失敗できない、と考えると自信が持てず、一旦は断ってしまったという。しかし編集者は諦めず、数ヶ月後に再度申し出を受け、ようやく書き始めたと執筆までの紆余曲折を語った。

 更に番組では雑誌連載終了後に単行本にする際、編集者に大幅な書き直しを命じられ「大手術」が行われたことも明かしていた。そして改稿を重ねた結果、自分でも「これはイケる」と思える程の自信作になった、と編集者たちの情熱にも感謝をあらわした。

■記者ならではの取材力

 塩田さんは元神戸新聞の記者だ。事件に関する資料を集め、関係者らに話を聞き、事件のディテールをなるべく史実通りに再現したという。しかし同作はフィクションであり、番組でも事件の展開を追いながら「この部分は小説家としての視点」とはっきりと創作と事実を分けて解説した。

 また塩田さんはスタジオにスーツケースに入れた膨大な資料を持ち込み、ひとつひとつ解説していた。実際の脅迫状のコピーや、警察の捜査資料のコピーをみた稲垣さんは「初めて見た。怖いねえこうやってみると」と興奮気味に驚きをあらわし「これはやっぱり記者時代の」と元記者ならではの塩田さんの取材力に敬意をあらわした。

「ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。次回6月15日のゲストは新保信長さん。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年6月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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