作家、三浦しをんさんの最新刊『ぐるぐる♡博物館』の先行発売記念トークショーが6月9日夜、東京・渋谷TSUTAYA 7Fの「WIRED TOKYO 1999」で開かれ、三浦さんと「風俗資料館」館長の中原るつさんが出演した。三浦さんが「天国でした」と賞賛する「風俗資料館」の蔵書の一部が紹介され、詰めかけたファンと盛りあがるひと時となった。
■独自のアンテナと切り口によるルポ・エッセイ
旅先で発見したらとりあえず入ってみるほど、博物館が好きという三浦さん。6月16日発売の『ぐるぐる♡博物館』は、興味のおもむくまま10館を訪ねた本編と“寄り道編”から成るルポ・エッセイだ。今回対談した中原るつさんは、本編第8館目に登場する「風俗資料館」の3代目館長を務め、ここはなんと「日本で唯一のSM・フェティシズム専門図書館」。SMには疎い三浦さんは会員制の図書館をドキドキしながら訪ね、素晴らしい蔵書の数々に感動したという。
■この世にひとつ。私家版にあふれる情熱
今回のイベントで、中原さんが特別に持参してくれたのが、SMや“萌え”がまだ認知されていなかった時代に、個人の趣味で密かに作られていた私家版資料だ。臼井静洋という画家がパトロンのために1枚1枚描いたSM画集は、紫の頭巾をかぶった武士に娘が誘拐され、そして……というストーリー。ほかに、雑誌や新聞小説の挿絵から縛られた女性の姿をコレクションし、猿ぐつわを手描きしたスクラップブックも。「私家版はこの世にひとつしかなくて、思いが込められている。しかも、なんだか楽しそうなんですよね。浮き浮きして作ったんだろうなというのが感じられて、何物にも替えがたいお宝だと思う」と、三浦さんは話した。
■復活した雑誌「ニャン2倶楽部」とは
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- ぐるぐる♡博物館
- 価格:1,760円(税込)
また、投稿写真雑誌「ニャン2倶楽部」についても語られた。風俗資料館で閲覧して気合の入った雑誌作りに感銘を受けた三浦さんはエッセイのなかで2015年の廃刊を惜しんでいたが、トークショー当日、復刊を中原さんから知らされた。廃刊の憂き目に遭うも別の版元に移籍、刊行を再開したという。雑誌が苦戦する昨今、それも紙の雑誌が復活するのは珍しい。
「私個人はBL(ボーイズラブ)というジャンルがすごく好きで、同好の士の間で楽しむ感じです。ことBLに関しては、紙のコミックや小説をひとりで読んでいるのが好きな文字派です。風俗資料館で思う存分、みなさんご自分の世界に浸っておられるわけで、それは充実した人生ですよ」と三浦さんはBLを絡めて話し、会場を和ませた。
めまぐるしく変転する時代に、ひとりで自在に浸れる場所が「博物館」だ。実業之日本社創業120周年記念出版でもある『ぐるぐる♡博物館』は、三浦しをんさんが探りあてて取材した、個性あふれる博物館ルポが楽しめる。
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