【手帖】覆面文庫が人気で重版

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 〈止まらなくて怖くなった。(よくある表現で恥ずかしいけれど、そうなんだから仕方がない)こんなに遠い話を身近に感じることに、吐き気と寒気がした。本を掴(つか)んでいる手が泥で汚れていくような気がする生々しさで、ずっと飼いならしてきた獣の臭いがする〉

 文庫本は、そんな推薦文が書かれた黒い紙で覆われている。題名も作家も不明。それが快調な売れ行きで、版元にも在庫がなくなって緊急重版したという。

 ロックミュージシャンで作家の尾崎世界観さんが勧める本を覆面販売するイベント「世界観文庫」が東京・神田神保町の三省堂書店神保町本店で開催中(31日まで)。

 企画したのは同書店営業企画室の新井見枝香さん(36)。以前から知り合いだった尾崎さんがエッセー『苦汁100%』(文芸春秋)を刊行するのに合わせて話し合った。新井さんは「すごくいい文章を書く人だということを、本好きの人に知ってもらいたい」と考えた。「だから隠すことが目的ではなかったんです。尾崎さんの文章を読んでもらいたくて、こういうスタイルになりました」

 コーナーには、尾崎さんの著作と覆面文庫のほか、尾崎さんが「師匠のような人」と呼ぶ作家の千早茜さんの著書、さらに千早さんが選んだ「尾崎世界観に読んでほしい本」も並ぶ。

 この覆面文庫、実は「東京版」という設定で、別の本を同じく覆面で販売する「横浜版」がある。そちらは紀伊国屋書店横浜店で販売中。社の枠組みを超えて連携できた理由を聞くと「担当者とすごく仲良しなんです!」。尾崎さんは、それぞれの街の雰囲気や2つの店の特性なども考えて2つの本を選んだという。手書きの推薦文といい、ノリといい、人間味が伝わってくるのが人気の理由かも。

 エッセーも版を重ねており、ヒットがヒットを生む相乗効果に。尾崎さんも「うれしい」と喜んでいるそうだ。(篠原知存)

産経新聞
2017年7月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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