第157回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が7月19日築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に沼田真佑さん(38)の「影裏(えいり)」(文學界 5月号)が、直木賞に佐藤正午さん(61)の「月の満ち欠け」(岩波書店)が選ばれた。沼田さん、佐藤さんともに、初候補での受賞となった。
沼田真佑さんは北海道小樽市出身、盛岡市在住の塾講師。本作で、第122回文學界新人賞を受賞した。
「影裏」は、盛岡市の会社員の男性の目を通し、元同僚の友人男性の姿を描いた作品。岩手県の美しい自然の中、釣りに熱中する2人だったが、東日本大震災をきっかけに、友人の意外な一面が明らかになる。
佐藤正午さんは1955年8月25日生まれ。長崎県佐世保市出身で、北海道大学文学部国文科中退。1983年に『永遠の1/2』がすばる文学賞を受賞し作家デビュー。2015年『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。
文芸評論家の陣野俊史さんは、《荒唐無稽な話だとは思う。前世の記憶を持った人に会ったことのない、評者のような人間には、にわかに信じがたい話である。けれども、佐藤正午はそれを無茶(むちゃ)な話であると認めたうえで、この小説を書いている。そこでこそ小説家の筆が冴(さ)えるのだ。》(中日新聞 東京新聞)と評している。(https://www.bookbang.jp/review/article/531881)
また、盛岡大学教授の風丸良彦さんは、《歳を食うと小説片手にこんな体験は稀になるが、貪り読んだ。村上春樹や池井戸潤でもこうはいかない》(週刊読書人)と評している。(https://www.bookbang.jp/review/article/532591)
芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。
候補作は以下のとおり。
■第157回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)
今村夏子「星の子」(小説トリッパー 春号)
温又柔「真ん中の子どもたち」(すばる 4月号)
沼田真佑「影裏(えいり)」(文學界 5月号)
古川真人四時過ぎの船」(新潮 6月号)
■第157回直木三十五賞 候補作(出版社)
木下昌輝「敵の名は、宮本武蔵」(KADOKAWA)
佐藤巖太郎「会津執権の栄誉」(文藝春秋)
佐藤正午「月の満ち欠け」(岩波書店)
宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」(KADOKAWA)
柚木麻子「BUTTER」(新潮社)
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