キジムナーkidsキッズ 上原正三 著
[レビュアー] 切通理作(批評家)
◆沖縄戦後 強く生きる
ウルトラマンやスーパー戦隊、宇宙刑事などをはじめ、テレビで無数のヒーロー番組を手掛けた脚本家・上原正三がライフワークとして書いた自伝的小説。戦争が終わって三年経(た)つ沖縄での「キジムナーkids」と呼ばれた少年たちの生命力溢(あふ)れる群像劇。そこには「戦果」と称し、米軍の物資を横流しして貿易の礎とする、したたかな戦いの原像があった。
あまりに悲惨な地上戦を経験した沖縄。本作は、そのことの意味するものが語られる。生き残るということは「自決をしなかった自分」を引き受けていくことだった。死んだ者への後ろめたさの感情は、あらゆる戦争体験の本質といえよう。
主人公「ハナー」は怖がりの少年なのに、亡霊と話をしようとする。死者と生者が折り重なる沖縄から目をそらさない。「フリムン軍曹」と呼ばれる、壕(ごう)の中で人骨を仮面とする亡霊のような男は、戦争から逃げ続けながら、その戦争が終わった時、自ら「軍曹」を名乗り、死者を弔い続けてきたことをハナーに語る。
そこには、成長したハナー=上原正三の生き様も重ね合わせることができよう。上原の描いたスーパーヒーローたちは、人殺しや戦いを嫌う作者の「仮面」だった。そして彼らは常に「人類の自由と平和」を願っていた。平和とは「生きていていいんだ」と言える自由のこと。作者の生命賛歌の原点がここにある。
(現代書館・1836円)
<うえはら・しょうぞう> シナリオライター。著書『上原正三シナリオ選集』など。
◆もう1冊
飯島敏宏・千束北男著『バルタン星人を知っていますか?』(小学館)。ウルトラマンシリーズの脚本家・監督の回想。