『無能男』佐川恭一著

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『無能男』佐川恭一著

[レビュアー] 産経新聞社

 大学生の翔太は、つきあい始めた綾香の気性の激しさに翻弄される。繰り返される無謀な要求、罵詈(ばり)雑言にも愚直に応え、耐え、懸命に尽くすが、ついに爆発する。それでも心の中では彼女が生き続けていた。やがて精神を病んだ翔太を綾香の意外な一言が救う……。

 ネット、メールなどに囲いこまれるなか、純粋、不器用ゆえ生きづらさ、不安を抱え、出口を求めて必死にもがく若者の内面を徹底的に描いている。

 出版元が「もんもん(とした思い)は何かが生まれる原動力」と2005年から主宰する「もんもん文学賞」の今年度大賞受賞作。(南の風社・1200円+税)

産経新聞
2017年8月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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