【手帖】昭和史の指導者15人の実証的人物伝

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 昭和史ブームの昨今。書店には昭和戦前期を題材に「歴史の教訓」を学べと説く本があふれるが、“昭和史の大家”の著書であっても現在の研究水準に照らすと明確な誤りをいくつも含む不誠実な書籍も少なくない。研究が進む歴史学の最先端と一般向け昭和史本との間のギャップを埋めるべく、実証的歴史学者らが企画したシリーズの第3弾『昭和史講義3-リーダーを通して見る戦争への道』(筒井清忠編)がちくま新書から刊行された。900円+税。

 田中義一、幣原喜重郎、東条英機、重光葵ら15人について、第一線の研究者が生い立ちから経歴、決断の背景やその功罪に踏み込んだ人物論を展開する。

 たとえば日中戦争勃発時の海軍大臣である米内光政。当初は不拡大派だった彼が第二次上海事変に際し強硬派に転身したのは従来「謎」とされてきた。本書では最近の研究を参照しつつ、昭和天皇の意向の影響および艦隊勤務が長く軍政経験に乏しい当時の米内のキャリアを考え合わせると不可解な豹変(ひょうへん)ではなかったと解釈している。

 一人一人に割かれた分量は限られているが、より詳しく知るための参考文献や史料集のガイドがそれを補っている。正確な史料に基づいた史的人物論の復興の試みだ。

産経新聞
2017年9月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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