「いい成績」が目標の時代は終了! 子どもの才能を開花させる教育とは?――茂木健一郎さん、子育てと教育を語る

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文科省自体が、国際バカロレア資格を取得できる学校の設置を推進しているし、近い将来すべての大学の入試がAO入試になるだろうというのがぼくの予想です。そうなると、偏差値の高い大学を目指して、お受験のころから18歳までいろんなことを我慢して努力する、なんていうことには意味がなくなると思うんです。

むしろ、偏差値とか受験勉強はそこそこなんだけどほかの何か、たとえばプログラミングがすごく得意だとか、外国で生活して勉強した経験があるとか、そういう子のほうが後々成功する可能性が高い。

 さきほどいったようにいまは教育イノベーションの時代で、オプションがどんどん増えています。とにかく情報をたくさん集めて、いい成績をとることよりもその子の個性をどう伸ばしていくかを重視して考えてみてください。

 たとえばいま塾業界では、従来の受験対策ではなく、探究学習、アクティブラーニングをサポートする活動を重視する塾やNPOが増えてきています。ホームスクーリングはハードルが高くても、そうした塾などを活用すれば、普通の小学校に通いながらも課外活動として表現活動やプログラミングなど、その子の好きなことを探究させることもできます。

 最近では、いままでの常識からはずれた、非典型的なキャリアの人の成功事例もたくさんあります。そういう事例も参考にしながら、周囲に流されずに、お子さんにとってのベストプラクティスを探すことです」

心のなかの「インナーチャイルド」を大切に

さて、ランニングが趣味の茂木さん。今朝も都内某所を走っていたのですが、こんな光景を目撃したそうです。

「男の子が泣きながらお母さんを追いかけていて。お母さんはもう知りません!っていって先にスタスタ行っちゃってる。あれはダメですよ。子どもが泣いたら抱っこ、これ基本です。日本のお母さんはときどきとても冷たい(笑)。あれは何でかなあ?」お母さんたちにユーモラスに問いかけながら、子どもの「安全基地」になりましょう、と呼びかけます。

「親の役割は子どもの安全基地になってあげるということです。安全基地があるからこそ、子どもは外の世界に対して興味がわき、探索しようとします。一番大事なのは、子どもの挑戦を邪魔しないことです。そして、どんなことがあっても子どもをやさしく見守ってあげること。

 ぼくの母親は、ぼくが蝶の研究に没頭するのを決して止めませんでした。これはありがたかった。いまにして思えば、この時代に体験したことがぼくの人生にとって一番役に立っている気がします。

 自分でいろんな世界を探索することを覚えた子どもは、その後もどんどん、勝手に世界を冒険していくようになります。起業家になるか歌舞伎役者になるか、フラワーアレンジメントをする人になるかはわかりませんが、これからは、ある世界をとことん突きつめられる人が一番面白い時代だし、そうじゃないと日本の国全体が発展しない。そういう創意工夫ができる子どもを育てていければ、とぼくは思います。

 それから、インナーチャイルドといいますが、大人の皆さんだって心のどこかに子どものような気持ちを持ち続けているんですよね。だからいくつになっても、子どもと同じようにチャレンジできることを忘れないでほしいですね。そういう気持ちを大切にすると、子どもを育てるだけじゃなくて、自分自身も成長することができますから」

大人たちへのメッセージで講演は締めくくられました。この後の質疑応答も含め、大いに盛り上がったトークショーでした!

日本実業出版社
2017年9月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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