安藤忠雄の仕事論に稲垣吾郎も共感「やっぱり人なんですね」[ゴロウ・デラックス]

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 稲垣吾郎さん(43)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」(TBS系)に29日、建築家の安藤忠雄さん(76)が出演した。安藤さんの仕事に対する考え方に稲垣さんも共感をあらわした。

■型破りな半生記

 今回の課題図書は、安藤忠雄さんが自身の半生を綴った『安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書―』(日本経済新聞出版社)。番組では安藤さんの代表作である「住吉の長屋」や「光の教会」、「表参道ヒルズ」などの建築にまつわる裏話や、独特の経歴に裏打ちされた仕事術が語られた。

 安藤さんは元ボクサーで建築も独学で学んでいる。ボクシングで「人生は誰も助けてくれない」ということを学び、たったひとりで建築の道へと歩みだしたという。本を読み実物を見て学び、大学の講義に潜り込み、一心不乱に勉強を続け一級建築士の資格を取得したという。

 同書で安藤さんは「仕事は自分でつくらなければならない」と述べ、「私の歩んできた道は模範と言うには程遠い。が、この一風変わった歩みが若い人を少しでも勇気づける材料となれば幸いである」と述べている。稲垣さんは同書について「若い方に読んで頂きたい。喝を入れられているような、我々も」と感想を語った。

■自然との共生

 安藤さんは建物の一部が野外に露出し中庭となっている「住吉の長屋」や自然の坂を利用した「表参道ヒルズ」について触れながら「建築は周囲の環境をどう味方にするか」が大事と語り、「自然との共生」を常にテーマとして扱う理由を、「生きているという感じがじっくりくる」と自説を語った。

 現在国立新美術館で開催されている「安藤忠雄展―挑戦―」では「光の教会」が実物大で再現されている。「光の教会」は大阪府茨木市の茨木春日丘教会に1989年に建てられた礼拝堂だ。打ち放しのコンクリート造で、正面の壁に十字のスリットが空き、十字架が表現されている。

 ここで安藤さんは依頼主との意見の対立があったと明かす。安藤さんは本来、スリット部分に何も入れたくなかったという。しかし現在そこにはガラスがはめこまれている。依頼主は何もないと礼拝所の中が寒くて仕方がないというのだ。安藤さんは何も入っていないほうが「自然がまっすぐに入ってくる」と考え、行く度に「そのうち取ってやる」と思っているという。「安藤忠雄展―挑戦―」ではガラスなしのものが見られる。

■人の心の中に残るもの

 安藤さんは「光の教会」を作りたかった理由として、初めて訪れたヨーロッパで見た教会の光の美しさに感動したからだと語る。そこで味わったような「心のなかにしっかり残るもの」をこれからも作りたいと語りだした。

「稲垣さんの歌声が心の中に残っている人はいっぱいいる。我々は建築を通して心のなかに残る場所を作りたい」と稲垣さんの仕事との共通点をあげる。建築家を続けている理由に関しても、「みんないっしょでしょう。(稲垣さんは)歌い続けている。(自分は)作り続けている。自分の仕事に誇りを持ってやりたい。誇りを持ってやれる仕事が見つかってよかった」と語る。

 稲垣さんも「やっぱり人なんですね。僕らの仕事もそうなんですけど」と人の心との繋がりが仕事のやりがいになっていると共感をあらわした。安藤さんは「声と光やね。光は心のなかに残る。声も綺麗だったなと(残る)。そういうものを作りたい。誇りをかけて生きている限りやりたい」と信念を熱く語った。

 安藤忠雄さんの挑戦の軌跡と未来への展望を紹介する「安藤忠雄展―挑戦―」は国立新美術館(東京・六本木)で12月18日まで開催中。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。次回の放送は10月5日。ゲストは沼田真佑さん。課題図書は第157回芥川賞受賞作「影裏」(文藝春秋)。

Book Bang編集部
2017年9月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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