東日本大震災を扱った初の芥川賞作品「影裏」 扱った理由を作者が明かす[ゴロウ・デラックス]

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 稲垣吾郎さん(43)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」(TBS系)に6日、第157回芥川賞を受賞した沼田真佑さん(38)が出演した。受賞作「影裏」で扱われた題材、東日本大震災やセクシャルマイノリティについて沼田さん自身が解説した。

■デビュー作で芥川賞

 沼田さんはデビュー作となる「影裏」で芥川賞を受賞した。受賞式で沼田さんは「ジーパン1本しか持ってないのにベストジーニストみたいな」と語り、話題となった。「影裏」は首都圏から岩手県へ転勤した30代の会社員・今野が主人公。同僚で釣り好きの日浅と知り合い友情を育むが、日浅の転職をきっかけに疎遠になってしまう。その後東日本大震災が起こり営業で釜石にいた日浅が被災したかもしれないと知る。

 芥川賞の決め手となったのは、描写が非常に優れている点だと選考委員の高樹のぶ子さんは語る。特に自然に関する描写を絶賛した。番組で沼田さんは舞台となり描写された生出川を案内し、岩手を舞台にして書こうと思った理由を「住んでいる場所を舞台にするのが説得力がある」と語った。

■コントロール出来なくなったときに

 同作にはSRS(性別適合手術)を受けた人物も登場する。選考委員の吉田修一さんは、セクシャルマイノリティを恋愛や性愛を通さずに描いている点も受賞理由としてあげる。

 沼田さんは「いろんな状況で人はマイノリティになると思う。そういうものを掬う。掬い取るのが文学の一つの役割だと思う」と語る。しかし同作でマイノリティを扱ったのは「偶然」だったと明かす。そして「ある程度大枠は決めるけど、そこから自然とそれていく。『小さくまとまるなよ』という呼び掛けみたいな。そっちの方に行ってみる、失敗を覚悟で」と沼田さんなりの小説作法を解き明かした。

 それを聞いた稲垣さんは「コントロールが出来なくなった時が一番いいパフォーマンスが出来ますよね」と同意する。これまでに所属していた事務所を飛び出し、SNSやネット番組、ブログ執筆に挑むなど、未知の領域に踏み込んでいく決意をした稲垣さんにも、思うところがあったのだろうか。

■東日本大震災を扱った初の芥川賞作品

 同作には東日本大震災が描かれるていると話題になったが、選考委員の高樹のぶ子さんによると「全面に押し出した作品ではない。密やかに一歩引いている。人間関係を描くことでそれを取り囲む大きな自然の怖さに言及している」と評している。

 沼田さんは小説の設定が「2010年から11年。あの時代の人や社会を書けばおのずと震災のにおいがしてくる。あくまでもその時代の人を書いただけ、その時代の人を書いたら立ち上ってきたんでにおいが」と解説し、ただし「途中から意識しました」と明かした。

ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58から放送中。次回の放送は10月12日。ゲストは燃え殻さん。課題図書は『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)。

Book Bang編集部
2017年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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