【聞きたい。】高橋幸枝さん 『そっと無理して、生きてみる』

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

そっと無理して、生きてみる

『そっと無理して、生きてみる』

著者
高橋 幸枝 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093884921
発売日
2017/09/12
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】高橋幸枝さん 『そっと無理して、生きてみる』


高橋幸枝さん

 ■100歳から「80歳以下の若い人」へ

 「80歳以下の若い人へのメッセージ」という書きぶりがいい。著者は、御年100歳の精神科医。健康維持のコツや、生きる上でのヒントをアドバイスする。

 「別に難しいことじゃないのよ。私が普段考えていることや、やっていることを文章としてまとめたものです。日記を書いたり、なるべく階段を使うとかね」

 足にけがをした昨年まで診療を続けていた。半世紀以上、患者に寄り添った人生経験があるからこそ、「悲しみに暮れている人にどう接するべきか」などの回答には説得力がある。

 二・二六事件(昭和11年)のときは現場近くの海軍省で働いていたといい、「私も歴史上の人物よ」と冗談めかして語る。

 医者を志したのは、タイピストとして中国・青島で勤務中、現地で医療に携わっていた牧師との出会いがきっかけ。その後、30代で医師のキャリアを始動、50代で神奈川県に病院を開設。ちなみに絵画を始めたり、お酒をたしなむようになったりしたのは80歳から。

 「物事を始めるのに、遅すぎるということはないんですよ」

 現在は健康をキープ。数独や、サッカー日本代表の試合に夢中だ。「『年を取ると何もできない』と周りから言われるし、自分でも思い込んでしまいがちだけど、そんなことはありません。意外とやれることは多いし、頭も使えばさびませんから」

 本書では、「年を取ったからこそ、苦手なことに挑戦する」ことを勧める。とはいえ、年齢を重ねると身体能力はどうしても落ちてしまう。だから、「以前できたことができなくても落胆しない」とも書く。「ちょっとだけ、無理をすることが大事」と語るバランス感覚に共感できる。

 「この年だから、よく『人生のしまい方』を考えています。でも、いつかは老人ホームを建てたいという夢は、今も持っているんですよ」。読むと温かな気持ちになると同時に、こちらの背筋をしゃんと伸ばしてくれる本だ。(小学館・1200円+税)

 本間英士

  ◇

【プロフィル】高橋幸枝

 たかはし・さちえ 大正5年、新潟県生まれ。医療法人社団秦和会理事長。

産経新聞
2017年10月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク